第1038回
アンチ・グローバル化もまた時の勢い
安い商品がいくらでも外国から入ってくるようになれば、
国内で物をつくっても引き合わなくなります。
工場は生産をやめなければならなくなるし、
工場が閉鎖すれば、失業者がふえて
不景気が一そう深刻になります。
日本の家電メーカーを見たらわかることですが、
テレビやクーラーや冷蔵庫を日本でつくっても
中国製と太刀討ちできなくなってしまったので、
日立、東芝をはじめ大半の家電メーカーが
工場を閉鎖しています。
生き残る方法としては、
中国でできない高度の技術を要する商品だけを残し、
量産の普及品は自分らの工場を中国大陸に移すか、
現地のメーカーにOEMでつくらせて、
自分らの会社のブランドで売るか、
でなければ中国のメーカーの商品を
その代理店となって売るかということになってしまいます。
家電メーカーはそのほんの一例にすぎませんが、
グローバル化によってデフレの風が
世界中から吹き込んでくるとなると、
その影響を受けて産業界全体が淘汰の対象になり、
いくらリストラをしても間に合わない企業も続出します。
その一方でお金が国内から逃げ出して
お金の儲かりそうな国へ移りますから、
その被害を蒙る国ではどこもグローバル化には強い抵抗を感じ、
いっそもう一度、国境を高くして
塀の中にとじこもった方がいいんじゃないかという
保護貿易論者の主張が勢いを得ます。
先進国ほどまともにその被害を受けるので
アメリカでも日本でも
自由貿易に対する抵抗と批判が強くなります。
日本の場合は輸出によって今日の地位を築いてきたので、
矛盾を感じながらの抵抗ということになりますが、
それでもセーフ・ガードの発動をしたり、
物づくりが日本人の生きる道だとくりかえし強調しています。
台湾に至っては資金の大陸移動を政府が制限したり、
大陸投資を国賊扱いする本土化運動も起っています。
時の流れに対する儚き抵抗と言ってもよいでしょう。
でも侮どることのできない動きになることが考えられます。
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