第981回
銀行の役割が減ってしまったのです

いくら不良債権の整理をしても、
また次々と新しい不良債権が発生して片がつかないとしたら、
一体、日本の銀行はどうなるのでしょうか。
一頃は体力のある銀行が体力の弱った銀行を
吸収合併することによって混乱をさけましたが、
いまはかつて健全と思われていた銀行が
すっかり体力を消耗していますから、
弱った同志でもたれあいをするようになりました。
「三井住友銀行」とか、その他
わけのわからない名前の銀行の看板を見る度に、
少し前には想像もできなかったようなことが
金融界に起っていることがわかります。

高度成長を背景にしてインフレが恒常的に進行していた頃、
人々のふところ具合がよくなって行く過程で
物価が間違いなく上昇したので、
私は借金をして財産をつくることを人にすすめました。
私にすすめられて早くに借金をして
マイホームづくりをした人は地価の安い時に
自分の家を建てることができたし、
借金を楽々返済することができました。
借金経済学の理論を利殖に応用した人は
莫大な財産を築くことにも成功しました。

産業界の人たちは経験的にこのリクツがわかっていましたから、
自己資本より借金による経営に傾き、
ビルも工場も鉄筋よりは「借金コンクリート」で築いて、
世界のトップに踊り出したのです。
そのおかげで銀行は異常な繁栄を続け、
銀行の経営者たちは他人のお金を預かって
金利のサヤを抜くだけの仕事で産業界に君臨してきました。

でも一転してデフレになると、
物をつくっても、物を売っても、
また先廻りして土地を買いにまわっても
付加価値が発生しなくなってしまったので、
お金を借りるメリットがなくなってしまいました。
お金を借りてもお金が儲からなくなれば、
銀行からお金を借りる人がいなくなるのは当然です。
お金を借りる人がいなくなれば銀行が成り立たなくなります。
銀行が大きく後退する時代になったのですから、
銀行の大半が繁華街のド真ん中から姿を消したとしても
不思議ではありません。


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2002年11月16日(土)

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