第899回
香料の道に新しく陽が当るかも

これも偶然のことですが、45年ほど前に
私は「醤をすすめる」という食べ物エッセイを
おなじ「あまカラ」誌に執筆しております。
この時は阿川弘之さんに
「中華料理には色んな醤(チャン)を使うでしょう。
 われわれには何が何だかさっぱりわかりませんから、
 ひとつあの解説をして下さい」
と頼まれて筆をとったものです。
隨園食單の著者袁牧先生によると
醤も含めて油や酒や酢や、
それから塩、砂糖、胡椒、生の如き作料は、
「婦人の衣服首飾のようなもので、
 たとえ天性の美を有し、化粧が上手であろうとも、
 ボロをまとわされたのでは
 西施の美を持ってしても美人たりがたい」
そうです。
従ってごく少量しか用いない場合でも、
よいコックは作料の選択に腐心しなければならないと
美食の大先生は言っておられます。

日本人に一番よく知られているのは、
多分、麻婆豆腐に使われている豆辧醤と呼ばれる
ソラ豆と唐辛子を主原料とした辛い醤でしょうが、
このほかに辣椒醤とか、 蝦醤とか、芝麻醤とか、
柱侯醤とか、また甜麺醤、蜆介醤、酸梅醤など、
実にさまざまの味噌状のものがあります。
なかでも最も有名なものは四川省に集中しており、
四川の人たちはふだん食べる料理でも
とびあがるほど辛くないと元気が出ないようです。
どうしてそんな辛い物を食べるのかときくと、
しびれるほど辛い食べ物は骨を丈夫にするので
年をとっても
関節炎に悩まされることはないということでした。

キムチのブームもそろそろ日本国中に
行きわたりましたから、
この次は香料の道の醤ブームに
お鉢がまわってくる番かも知れません。
デフレ時代の一方の旗頭は新商品の開発ですから、
違う角度から中国料理の素材を見直す時期に来ています。
私は半世紀近くも前にそういう分野に興味をもちましたが、
歴史はくりかえすと言いますから、
あるいはめぐりめぐってそこへ戻ってくることも
考えられないことはありません。
中華料理の奥の深いところにさぐりを入れるのも
商売につながる可能性があります。


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2002年8月26日(月)

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