第826回
とんかつは台湾でうける日本料理です

私が百円ショップの店長候補の青年に
とんかつ屋の職人に鞍替えをすすめたのは、
本人の能力を見た上のことでしたが、
どうしてとんかつ屋と言ったかというと、
台湾の日本料理屋で左前になったのを、
いま私が建てなおしにかかっているからです。

「会社の寿命は30年」と言われていますが、
料理屋の運命はもしかしたら、もっと短いかも知れません。
30年もすると、料理人あがりの主人も
もう年をとってしまっているし、
お客もすっかり入れかわってしまいます。
人の嗜好も年と共に変わるけれど、
時代の嗜好はそれ以上に変わります。
ミシュランの3つ星のレストランを見てもわかるように、
ナポレオンの時代から続いていますというレストランは
先ずありません。

台湾で30年近くもやってきたうちのビルの日本料理屋も、
新しい高級店が次々とできてきたのと、
板前も年をとったのとで、古いお客を抱えたまま
赤字経営に転落してしまいました。
私の懇意にしている日本の料理屋の主人に
再建を依頼したところ、
「この1年に自分の店も様変わりに経営悪化して、
 とてもよそまで手がまわりません」
と断られてしまいました。
私は他力本願は間違いだと考えなおして、
「よし、シロウトなりに建てなおして見せる」と決心して、
いままでのメニューを一律に半額に下げました。
お客を呼ぶためには評判になる料理が必要なので、
鰻は重箱に入ったお上品な出し方をやめて、
百円ショップで買ってきた丼を熱湯で茹でて、
手で持てないくらい熱い丼に熱いご飯をのせ、
その上に鰻をのせるようにしました。
お客は舌がヤケドしないかと焦って食べますから、
味のことを気にしているヒマがなくなるのです。

もう1つのとんかつは半値にした上、
1切れの肉を50%ふやしましたから、
いままで年寄りの客ばかりだったのが
半分以上が若い人に変わりました。
私が食べるとまずいとんかつですが、
台湾の人に一番うける日本の食べ物だ
ということがわかったのです。


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2002年6月14日(金)

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