第712回
その土地の特徴をうまく生かしましょう
しょっちゅうバンコクに行く人なら、街を歩いていて、
「ここは宝石屋の多い街だなあ」
とすぐに気がつくと思います。
タイとかビルマとか雲南省は
ヒスイやルビーやエメラルドの産地ですから、
宝石屋が多いのは当たり前でしょうが、
日本が工業化に成功して豊かになると、
宝石に対する需要がふえましたから、
日本の宝石屋がタイによく来るようになりました。
宝石を仕入れに来るだけでなく、
なかには加工工場をつくったり、
そのままこちらに定住して宝石商を経営している人も
珍しくありません。
しかし、バブルと共に
宝石ブームも終わってしまいましたから、
宝石だけやっていても
商売が成り立たなくなってしまいました。
会社に派遣されてきた人なら、
サラリーマンですら会社の仕事がなくなってしまえば、
日本に引き揚げるよりほかありませんが、
この土地に定着した日本人なら、
次にメシのタネになる仕事をさがすことになります。
もともと日本の市場を背景にして
タイに来たひとたちですから、日本とタイを結んだ線上で
何かやる仕事がないかと考えます。
私の知っている青年は宝石の貿易からスタートしましたが、
宝石、細工、アクセサリーというジャンルで
物を考えることになると、
高価な物から安くて大衆的な物に移るよりほかなくなり、
結局、小は百円ショップで売るピアスから、
コンビニで売るリングの類まで
ヤング相手の小物を手がけるようになりました。
それでも手先の器用な人をたくさん使って
人海戦術で勝負することに変わりはありませんから、
やっぱりそれぞれの土地でやる勝負は
あるものだなあと感心させられます。
しかし、その土地で現に売っているものを
一緒になって売買したり、
日本に持って行って売ってもお金にはなりません。
たとえば、タイはシルクの産地ですが、
それを改良して世界的に有名にしたのが
ジム・トンプソンという人です。
いまもジム・トンプソンの店に行くと、
ふつうのタイシルクの
3倍も5倍もの値段で売っていますが、
商売をやるにはどうしてもああいう発想が必要ですね。
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