第588回
アメリカ文明の継承者は中国か?

グローバル化は工業の世界で最も顕著に現われています。
工業は産業革命のきっかけとなったイギリスにはじまり、
ヨーロッパから更にアメリカに拡がって行きました。
戦後、日本で工業化が大へんな勢いですすみ、
日本をアメリカと並ぶ豊かな国にしたのも、
考えて見れば、工業がそれに適したところを選んで
地球上を移動したからです。

勤勉で安価で良質な労働力、
それに通貨が安くて安定していることが基本的な条件です。
あとはインフラが整うことと
政情が比較的に安定しておれば、
工業化を推進する条件は揃います。
戦後の日本はそういう条件が整っていましたから、
世紀の奇跡と呼ばれるような画期的な経済成長を
遂げることができたのです。

でもうまく軌道に乗って工業化がすすむと、
賃金は世界のトップレベルまで上昇してしまうし、
円高になって生産コストがうんと高くなってしまったので、
国際競争力を失ってしまいました。
労働力は所得水準の高いところに動きますが、
資本は賃金が低くて生産コストの安い地域に移ります。
人が動くのと違って、お金の動きはもっと敏捷で
しかも動いた先から歓迎されますので、
人間が動くようなもどかしさはありません。
農業よりも工業のグローバル化のテンポが早いのは
人の動きではなくて、お金の動きだからです。

アメリカはモノ・カネ・ヒトの中で
最もカネの能率に重点をおいた展開をやってきたので
物をつくるより金づくりに目が向いてしまいました。
そのおかげで日本の工業化がすすみ、
ついで中国の工業化に手を貸した形になっています。
面白いことにイスラム圏は
欧米流の物質文明と波調が合わず、
それと正面衝突していますが、
日本についで中国がプロテスタントに近い
物質文明の受け入れ方をしています。
アメリカから物質文明のバトン・タッチを受けるのは
もしかしたら中国かも知れないという
感触を持っています。


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2001年10月19日(金)

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