第520回
事業は危機意識のある人と組もう

現地で2社の冷凍工場を訪問しましたが、
2社とも日本からのバイヤーが殺到して
大へんな賑わいを見せていました。
でも2社の社風は全く違っていました。
国営事業から発展して食品加工の一大集団になった会社は、
時流に乗って大へん勢いはいいのですが、
あまり危機意識を持っていません。
注文はいくらでも入るし、
日本の企業からは合弁を次々と申し込まれるし、
つくった物は輸出も国内消費も順調ですから、
拡大路線をひた走りに走るだけです。

もう一社は台湾からの進出企業であり、
誰一人知り合いのいないところへ、
ただ貧しいために人手に不足しないですむことと
農作物の生産に適しているという条件を見込んで
単独乗り込んできていますから、
地元の人たちに対しても大へんな気の使いようだし、
契約農家との約束を守らなければなりませんから、
ほんの小さな変化に対しても敏感に反応します。

私たちが訪問した時は現地の工場の中国人の総経理は
よくくる日本人の取引先の一団くらいに思っていましたが、
永田さんのつくったトマト・ジュースを一口飲ませたら、
本人も農業の専門家ですから、
途端に態度が改まり、僅か2日間ですが、
最後の日には、
「あなたは私の先生です」
と心から敬服している様子でした。
その率直で真剣な態度に私も好感を持ちました。

もし提携先として選ぶなら、
私は自分の事業に対して危機意識を持った相手を選びます。
危機意識があれば、それを避けるために必死の努力をします。
早くから自分の欠点に気づき、それをなおしにかかります。
事業の成否は危機意識の上に築かれるようなものであります。

私は永田さんに
「日本の次の時代の農業と思っていたけれど、
 日本国内で実現しないで、
 いきなりアジア的スケールで
 はじまることになりそうですね」
と言いましたが、帰る頃には
すっかりそういう気持にさせられてしまいました。


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2001年8月12日(日)

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