第444回
前回のデフレはアメリカから始まった

人類の歴史がインフレの歴史だったのは、
人類の歴史は欠乏と不足の歴史だったからです。
物が足りなければ、物の値段は上がります。
特に飢饉で食糧の不足した時は、
食糧の値段が暴騰して、
お金の払えない人は飢死しました。
戦争になっても、飢饉になっても、
物価は上がり続けたのです。

それに対して、どうしてデフレになったかというと、
時々、穀物がとれすぎて豊作貧乏になったからです。
物ができすぎて需要をオーバーすると、値段が下がります。
とりわけ貯蔵のきかないナマ物は
キャベツや白菜を焼いて捨てたり、
ブルドーザーで潰したりするのを見てもわかるように
処分するだけでも大へんな手間がかかります。
穀物はまだ貯蔵ができますから、少しはましですが、
胃袋の大きさに左右されますから、
胃袋からはみ出した分が10%にすぎなくても、
値段は半分にも値下がりしてしまうのです。

しかし、農業社会では
豊作貧乏はそう長くは続きませんでした。
農作物の収穫は天候に大きく左右されるし、
戦乱や内紛にも大きく影響されます。
豊作のために穀物の値段が大暴落をして
デフレの苦しみを味わうよりも、
作物のできが悪いために小作料が払えず、
娘を売る農民が後を絶たなかったのです。

ところが、新大陸が発見されて、
アメリカの開発がすすむと、
耕地はいくらでもあるようになりましたし、
不足するのは労働力と運搬の手段ですから、
アメリカから旧大陸への輸出が軌道に乗りはじめると、
外賃を稼ぐようになったアメリカで
先ずブームが起り、やがてそれが豊作貧乏という形で
アメリカを長い長いデフレに
追い込むことになってしまったのです。

先回の大恐慌の時は、工業はまた芽を出した程度で、
ブームの反動によって被害を受けたのは農作物でした。
それでも新大陸の経済発展によって
豊作貧乏が世界的規模で起ったのです。
それが今回は工業化によって起っていますから、
もっとずっと深刻だと考えるべきでしょう。


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2001年5月28日(月)

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