第443回
人類の歴史はインフレの歴史でした
インフレとデフレとどう違うかわかりますか。
もちろん、おわかりでしょう。
インフレとは物価が上がる状態を言い、
デフレは物価の下がる状態を言います。
人類の歴史はお金を使うようになって以来、
インフレとデフレのくりかえしですが、
インフレは長く、デフレは
(1929年の大恐慌後を例外として)原則的に短く、
デフレがすぎると、お金に困った領主たちが貨幣を改鋳して
「悪貨が良貨を駆逐」したので、
少々長い目で見ると、
物価はいつも上がる方向に向って動いてきました。
だから私は「人類の歴史はインフレの歴史です」
と本にも書いたことがあります。
ではなぜインフレの方が多かったかというと、
物が不足したからです。
物が不足すると、物の値段が上がります。
昔の通貨は金や銀などの貴金属でできていましたから、
供給に限りがありました。
物が上がると、通貨が不足してしまいます。
大量に食糧や必要物資を調達する立場にある王様たちは
お金に困りました。
とりわけ戦争になると、戦費の調達に四苦八苦しました。
そこで金持ちの商人たちからお金を借りるのに、
高い利息を払う約束をしました。
ところが、戦争が終って見ると、
負けた方はもとよりのこと、
勝った方もお金の返済には難儀しました。
仕方がないので、自分の国の通貨を
金の含有量の少ない新しい貨幣に鋳なおして返済しました。
ほとんどの王様がそういうインチキをやったので、
「詐欺師でない王様は見たことがない」とアダム・スミスは
その「国富論」の中で感想を述べています。
通貨が貴金属から離れてタダの紙になってからは、
国がその数量を自在に
調節することができるようになりましたから、
お金が必要になれば、次々ともっともらしい名目を設けて
紙幣の印刷をするようになりました。
いくらでも通貨の印刷ができるですから、
インフレになる条件は揃っています。
物の不足が続く限り、もしくはつくった物が売れる限り、
インフレは続くというのが戦後日本の経済の基調でした。
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