第435回
工業団地で芸術農業はいかがでしょう

工業化のプロセスで日本国内が
過密地帯と過疎地帯に2分されてしまいました。
どうしてそうなったかというと、
農業地域から人口が工業地域に移転したからです。

それでも過疎地帯に人口が残ったのは、
それぞれお家の事情で
家を離れられない人たちがいたからです。
過密地帯で工場を拡大しても
労働力が確保できなければ仕事にならないので、
事業を拡大する必要に迫られた企業は
過疎地帯に新しく工場を建設して
地方の労働力を活用することを企てました。
そのおかげで工業化の波が過疎地帯にまで押し寄せました。

それに勢いを得て、
バブル期には地方自治体が先頭に立って
工業団地の建設に走り、
工場誘致が大流行になりましたが、
いまになって見ると、
地方につくられた工場は
もっと賃金の安い中国や東南アジアにお株を奪われて
閉鎖の危機に瀕しています。
またいくら工場誘致をしても効果のない地方の工業団地は
草茫々のまま、銀行から借りた
莫大な建設資金の利払いに追われています。

インターチェンジからほど近いロケーションにある工場は
工場閉鎖をしても、自動車の通り道にありますから、
郊外型ショッピング・センターに転用できますが、
消費の伸びも思わしくないとなると、
新しいプロジェクトはすっかり影をひそめてしまいました。
工業団地に至っては
住宅団地に転用できそうにない位置にありますから、
工場をつくる予定だったところで
農業でもやるよりほかなさそうですね。

これは本当にあった話ですが、
私の友人で芸術作品のような農産物を
つくっている人がいます。
その人が北海道の工業団地を使って
糖度が10度前後のトマトづくりを
計画したことがあります。
「工業団地を使って農業生産ですか」
と私は面白がりましたが、
工業団地に出資をした電力会社のトップの人たちも
遊ばせておくよりはいいだろうと言って
すぐに賛成したそうです。
でも経営を受け持っている
役人あがりの役員さんたちに反対されて
いまだに宙に浮いたままです。
工業団地をいつまで草茫々にしておく積りなんでしょうね。


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2001年5月19日(土)

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