第380回
セーフ・カードで日本は救えません

ユニクロ現象が起るということは、
それに押されて商売の成り立たなくなる同業者が
たくさんでるということです。

ユニクロだって小さな商売をやっていた頃は、
国内の縫製工場に発注していたでしょう。
だんだん量がふえてくると、
誰しもコスト・ダウンを考えます。
商社が間に入って、コストの安い
中国、タイ、ベトナムのようなところで生産をしないかと
誘いがかかります。
そして、おきまりのトラブルに悩まされます。
規格に合わない製品が送られてきたり、
時間を守らずにシーズン・オフになってから
製品が届いたりします。

もう何度、やめようかと決心しなおすような
失敗をくりかえしながら、
ネックになっているところを1つ1つなおした結果が
企画から販売まで一貫したいまの体制ができたのでしょう。
お客がついて物がよく売れるようになり、
ジャーナリズムがその後押しをしてくれるようになれば、
量の勝負になるし、それが国内の同業者の
シェアを奪うだけでなく、
その下請けをしている縫製業者の職域にも
死活の影響をあたえます。

シェアを奪われた同業者たちが
黙って引っ込むわけもありません。
と言ってまともに競争して太刀討ちはできませんから、
輸入のさしとめをしてくれないかと
お役所に駆け込みます。
WTOにはセーフ・カードと言って、
輸入の雪崩れ的現象が起ると、
輸入量の制限と課税をしてもよいという条項があります。
日本製品の輸入に対して負け犬になったアメリカの同業者が
唯一の頼りにしたのが
この条項を政府に発令してもらうことです。

日本の業者はいつもこの条項に悩まされてきました。
企業努力によってコストダウンしただけのことで、
別にダンピングしているわけでもないのに、
というのが日本側の言い分でした。
それを適用して自分たちを守ってくれないかと
泣きべそをかくようになったのですから、
日本も落ちぶれたものですね。


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2001年3月25日(日)

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