第327回
金庫株で本業に熱が入らなくなる

株価を安定させるためには安定株主がたくさんいるに
こしたことはありません。
取引先や取引銀行に株主になってもらえば、
よほどのことがない限り、株を売ったりしませんから、
市場に株は出廻りません。
日本の安定株主は平均して7割くらいはありましたから、
株価は残りの3割によって決定されていました。

それに比べると、アメリカの証券市場では
年金などの機関投資家の持株が約半分を占め、
残りは個人とか、それに準ずる投機資金ですから、
上に行くときも早いけれど、
逆転しても同じようなことが起ります。
一般投資家は自分の買値を割ると売らなくなりますから、
下がれば大半が安定株主かも知れません。
もっとも個人投資家はどこで気が変わるかわかりませんし、
あてにするわけには行きません。
売手はいつでも買手だし、
買手は同時に売手にもなりますから、
そういう人たちに株価を支えてもらうことはできません。

やむを得ず建て株会社が自社資金を使って
株を買って金庫の中に蔵まっておくことを認めています。
日本では自社株の売買を禁じていましたので、
取引先に安定株主になってもらい、
それでもなお株価を調整する必要の起った場合は、
関係会社の資金がその役割をはたしてきました。
大っぴらにできることではありませんから、
人に知られないように、
控えめにやるのが常識でした。
自社株買いが許されるようになってからでも、
買った株を消却して減資することしかできませんでした。

ところが、日本でも自社株を市場で買って金庫に入れておき、
値上がりしたときに市場で売れるようになると、
建て株会社は本業で業績をあげるほかに、
自社株の売買をして利ザヤを稼ぐことが
できるようにしようという案が上がっています。
会社の役員が自社株の売買をするよりも、
そうなるともっと厄介なことになります。
アメリカでは安定株主がいないから
やむを得ず考え出された窮全の一策なのに、
日本でもそれを採用しようというのですから、
日本のお役人さんたちは一体何を考えているのでしょうね。


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2001年1月31日(水)

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