第272回
仕事を覚えるために就職先を選ぶ
人生には当てずっぽうのところがあります。
人の運命はどこでどうひらけて行くかわからないものだと
私は言いましたが、計画通りに行かないのが人生です。
だから一流企業を狙って出世コースに乗らなくとも、
そう悲観したものではありません。
もし私なら一流会社なんか狙いません。
大きな会社に入るときこえはよいかも知れませんが、
何千人、何万人も社員のいる会社は会社に入っても
ネジ1本の存在でしかありません。
会社がやっていることの全貌を
理解するのも容易でありません。
まして会社がやっている事業を勉強して
自分の血と肉にすることなど思いも及ばないことです。
会社に入った以上、会社のために働くことも必要ですが、
私なら自分のためになることを覚えるために
会社を選びます。
商社などは大きな組織ですが、そこに就職して採用されても
どこに配属されるかは会社の方が決めます。
鉄鋼部に配属されたらもう一生
鉄鋼畑の人になってしまうし、
食品部に配属されたら、
明けても暮れても食品のことばかりです。
そうしたちょっとした偶然が
その人の一生を決めてしまうのです。
将来、独立するようなことがあっても、
鉄なら鉄、食品なら食品の知識はあるかも知れませんが、
金ぐりはどうするか、人の使い方はどうするかは
もう1度はじめから勉強しなおさなければなりません。
そんな廻り道をするくらいなら、
私は社長がセールスから銀行めぐりまで兼ねている
中小企業の社長の鞄持ちか、運転手でもやります。
但し、中小企業ならどこでもいいということでは
ありません。
その仕事は将来性のある仕事であるかという
見きわめも大切だし、
こんな社長について行っても大丈夫かという
人間関係についての自分なりの判断も必要です。
もちろん、自分の能力についての自覚も必要ですから、
適当なところで手を打たなければなりませんが、
それでも自分なりの選択はできますよね。
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