第260回
私がデパートの経営者ならとても安眠できない
デパートはどこに行っても、
どうして似たような商品ばかり並べているのでしょうか。
また商品を並べる階数まで
ハンコで押したように同じなんでしょうか。
1階には必ずのように化粧品と靴ハンドバッグの類が、
地下には食料品が、そして、2階、3階、
(店によっては4階)が、婦人服、その上が子供服、
そのまた上に漸く紳士物が並んでいます。
陶器やタオルなどの家庭用品はその更に上の階、
家具がそのまた上の階、そして、特売場や食堂が
トップに設置されています。
昔は紳士用品売り場は2階にありました。
いまもその面影を残しているデパートはあります。
私が買い物をする時は
そういう紳士のプライドを重んじるデパートに行きます。
ところが、大抵のデパートは婦人物がよく売れるので、
紳士物を上へ上へと追い上げて、
児童用品よりも虐待するようになってしまいました。
化粧品が住宅ローンや光熱費の次に優先的な順位にあり、
一家の主人のカッター・シャツやセビロが
時間外手当によって購入される物だから、
不況になれば後廻しになることは事実でしょうけれども、
どこのデパートもそういう常識の殻から
一歩も外へ抜け出せないところを見ると、
デパートという商売は駄目になる時は皆、
一緒になって駄目になるでしょうね。
スーパーに食い荒されて、地方デパートは姿を消すか、
中央のデパートの軍門に下だりましたが、
傘下にスーパーまでつくって
生き残りを図った一流デパートも、
消費の流れに異変が起ると、
スーパーと同じように流通業界の新興勢力の
攻撃の的になってしまいました。
商品の並べ方から値段まで同じですから、
どこを攻撃すればよいか、
手のうちは全部わかってしまいます。
何でも売っているというのがデパートの強味でしたが、
1通り歩いても自分の欲しい物だけは
売っていないというのがデパートになってしまったのです。
これでは万里の長城も一たまりもありません。
私がデパートの経営者なら
とても枕を高くして寝てなんかおられません。
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