第224回
死霊に会いたかったら古戦場のホテルへ
九塞溝(ちゅうさいこう)という揚子江の源と隣り合わせに
黄龍(ふぁんろん)という
これまた同じ揚子江の支流にあたる
岷江に流れ込む泉があります。
大きな河の源になっている泉が溝の形になっていることを
今度の旅行ではじめて知りました。
2つの溝をつなぐ新しくひらかれた道路は
海抜5千メートルのところを走っていて、
チベットのラサより高いところにあります。
そんな高いところに自動車に乗って登るのは
生まれてはじめての経験でしたが、
心配していた高山病にもならず、
道より遥か上に聳える高峰の絶景にしばし我を忘れました。
実はこの時期はチベットに行っている予定でしたが、
2回も行きそびれてしまいました。
1回は北京の自分のマンションの玄関口で
足をつまづいて歩けなくなり、
次の月は何とか歩けるようになったら、
今度は急に台湾で用事ができてしまったのです。
やむを得ず自動車で登れるところに
急遽、予定を変更したのですが、
それでも結構、歩かされました。
私よりずっと年の若い人たちが
途中で断念して座り込んでいるのを見て、
人生には太く短く生きるか、
長距離走者としての頑張りと健康管理が
必要なんだなあと痛感しました。
2晩を九塞溝の新九塞賓館というホテルに泊り、
3日目は黄龍から下山して
松潘(しょんぱん)という古い町の
城門の前に建ったホテルに
暗くなってから到着しました。
建物は新しいのですが、
見るからに凄涼としていて廊下を上がろうとすると、
廊下の電灯が急に暗くなったり明るくなったりするのです。
またシャワーが突然水になったかと思うと、
ヤケドするくらい熱くなるのです。
はたしてその晩、
私は1時間くらいしか眠れませんでしたが、
翌朝、同行者にきいてみると、
ほかの5人もまるで寝られなかったそうです。
うちの1人は一晩中、戦争をしている夢に悩まされたと
ぼやいていました。
千年以上も経った城門の外は古戦場の跡ですから、
どれだけの人が死んだかわからないところに
きまっています。
私と同じ経験をしたかったら、ぜひどうぞ。
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