第223回
揚子江の水源地まで行ってきました

揚子江のことを中国では長江と呼びます。
中国で一番長い河だからです。
長江がどのくらい幅が広いかは
南京の長江大橋を渡ればわかるし、
有名な揚州料理を食べに行った帰りに
揚州から渡し船で鎮江まで自動車ごと渡ってもわかります。
あと1時間したら、上流の洪水が下ってくるから
渡し船も通れなくなるぞとおどかされながら、
揚子江を横断したこともあります。

また揚子江の絶景を見たかったら、
三峡下りをしなさいと言われています。
私は重慶から5千トン級の遊覧船に乗り込んで
武漢まで3日がかりで三峡下りをしたことがあります。
三国志の中で蜀の劉備が
戦争に敗れて死んだ白帝城のそばもとおったし、
やがて大発電所が完成したら、
ダムの底に沈んでしまう町は
こうだという説明も受けました。

揚子江を下る時は流れに乗ればいいのですが、
エンジンのなかった時代に船を上流まで上げるのは
大へんだったんですね。
若い男が何10人も文字通りの素っ裸になって
肩にロープをつけて、
ヨイショヨイショと引っ張ったんです。
その頃の写真がいまも残っています。

その長江の源がどこにあって、
どういう具合にできているのか、
この目で確かめたくなって
四川省の山奥の九塞溝というところまで行ってきました。
成都から車に乗って山道を海抜5千メートルのところまで
10時間もかかってやっと到着する大へんな道のりです。

周辺の山の眺めも絶景でしたが、
あの巨大な揚子江も、支流の岷江を
ずっと先の先まで辿ると、
山の中に泉の湧き出るところがあって
平らになった岩の上を100メートルくらいの幅にわたって
冷たい水が流れおちてくるのです。
流れの脇に板で歩道をつくって2時間も3時間もかかって
上の方まで登って行くのです。
どんな大河ももとを辿れば、
小さな泉からはじまっているのを見て、
世の中の仕組みがわかったような気がしました。
歩いて歩いて足もかなりくたびれましたが。


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