第105回
とてもためになったバブルの崩壊
バブルがはじけてから、
かれこれ10年の歳月がたちました。
そのあいだにお金の記事も
ジャーナリズムから姿を消しましたが、
人々のお金に対する気持ちも大きく変わりました。
バブルの頃はみながゼイタクをすることに夢中でした。
ファッションでも家庭用品や美術品でも
高価なものがよく売れましたが、
人々の心も物質におかされて荒れてしまいました。
お互いにお金のあることを見せびらかすような生活は
決して自慢のできるものではありません。
損をしたり、財産を失うことによって、
そうした生活態度に
大きな反省がもたらされたのですから、
バブルのはじけたことは日本人にとって
決して悪いことではありません。
一頃よりつつましい生活になったかも知れませんが、
人間としてはずっとまともになったと私は見ています。
しかし、土地や株の値段が下がったからと言って、
日本人の生活のレベルが下がったわけではありません。
坪1億円になった土地が1千万円に下がっても
1坪の土地の広さが縮んでしまったわけではありません。
同じように、株価が半分に下がっても、
1株50円の株は同じ1株です。
株価の場合はバブルに影響されるよりも、
むしろその業績によって
ふくらんだり縮んだりする性質のものなのです。
バブルとそれに続くバブルの崩壊を経験して、
一ぺん豊かになった日本人の生活レベルは
昔の貧乏な状態に逆戻りしてはおりません。
借金した人が財産を売ったり、
一ぺんふくらんだ財産がへっこんだりしましたが、
いまの日本人はバブルの前よりは財産を持っているし、
暮らし向きもよくなっています。
ふところ具合がそうなっている以上、
自分の財産を自分で運用しようという気構えは
強くなっても弱くなることはない筈です。
ジャーナリズムにマネー欄が復活したり、
「株で1億円儲ける本」みたいな出版物が
氾濫しはじめたのを見ても、
第2次マネー・ブームが起ってきたことがわかります。
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