第104回
お金に無知ではいられません
人間はお金を儲けた時よりも、
お金を損した時のことをよく覚えているものです。
儲けた時の喜びよりも、
大損した時の打撃の方が大きいからです。
貯金をするだけなら、お金の貯まり方が少々遅くても
大した被害はありません。
また自分の持っているお金の範囲内で
株や土地を買うのなら値下がりをしても、
貯金が減っただけですんでしまいます。
ところが、バブルの時は
お金のだぶついている時ですから、
銀行でも証券会社でも、あるいはファイナンス会社でも
簡単にお金を貸してくれます。
いわゆる資産インフレの起っている時ですから、
土地や株を買えば上がり、
上がるとまた土地や株を買うお金がふえますから、
お金儲けは簡単に見えます。
またそういう時に限って大して返済能力のない人にも
気安くお金を貸してくれますから、
ついつい気がゆるんで
身分不相応な借金をしてしまうのです。
借金は刃物みたいなもので、料理には役立ちますが、
一歩間違えると大怪我をすることについては
前にも述べました。
株の信用買いをして大損した人もあるし、
億ションと呼ばれる高価なマンションを
投資目的で買った人は
もっとひどい目にあっている筈です。
株は融資の期限が来ると半強制的に売却させられるので
被害が限られますが、
不動産は売るに売れずに
利息の支払いばかりかさみますから、
損害が大きくなるのです。
一ぺんそいう目にあった人は恐らく生涯
お金を借りる気にはならないでしょう。
借金をしなかった人でも、
株や土地の高値の時に手を出した人は
大ヤケドをしたような気持ちになった筈です。
そういう人たちは
新聞雑誌にマネーの記事が載っていたとしても、
見るだけでも気色が悪くなるにきまっています。
だからあっという間に
マネーの欄が姿を消してしまったのです。
しかし、それでもお金についての知恵が
いらなくなったわけではありません。
打撃を受けたとはいえ
昔よりお金持ちになったのですから、
お金に無知ではいられないのです。
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