第46回
お金の通り道に出てごらん
私は自分の財務相談室で、
ずいぶん色んな人にあってきました。
私に相談をかける人は
私に本当のことを打ち明けないと、
私からいいアドバイスが引き出せませんから、
自分の職業や財産について嘘やかくしだてはしなくなります。
私は作家として文章を書いてきましたから、
人間観察が本職のようなものです。
その私から見て、この人は能力のある人、
この人は学問のある人、この人は誠実な人と
さまざまの分類や評価が可能ですが、
それらの特性とお金とは直接、結びつかないんですね。
どうしてかというと、
東大出て立派な会社につとめて
かなり社会的地位の高い人でも
お金に困る人はお金のことで悩んでいるんですね。
また何百人もの人を使って
一国一城のあるじを勤めている社長さんでも、
会社のやっている仕事が
時代の要求にうまくあわなくなると、
青息吐息になって
七転八倒の苦しみを味わうようになります。
かと思えば、つっかけを穿いたまま
私の部屋に入ってくる青物市場のおかみさんが
何億円ある貯金でビルを建てたものかどうか
きくこともあれば、
現金商売をやって作った裏金を
どうやったら表に出せるか、
人がきいたら羨ましがるような結構な身分の人もいます。
そういう人たちを見比べると、世の中には
お金の儲かる商売と儲かりにくい商売があって、
うまくお金の儲かる商売にぶつかった人は、
さして能力がなくとも、お金と縁があるようになるのだと
いやでも気づかざるを得なくなります。
人の相談に乗っていて、
そのことがわかってしまったので、
それ以来、お金のあるなしで
人の差別をすることはなくなってしまいました。
お金持ちかどうかはその人の品格や評価とは
あまり関係はありません。
でも、もしお金持ちになりたいというのであれば、
勤倹貯蓄だけでは間に合わないことも事実です。
お金の通り道に出て行って
待ち構えていないと駄目なんです。
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