第12回
年をとったら皆で国にぶらさがりましょう
みんなが年をとれば、
働けるひとよりも働けなくなる人がふえます。
すると、年寄りの面倒をどう見るかが
社会問題になり、政治問題になります。
最近しきりに話題になっている
介護保険もその1つですが、
戦前は親が子供の面倒を見、親が年をとったら
子供が親の面倒を見るのが社会の通念でしたから、
老人問題は家族内の問題ですみました。
それが家族制度の崩壊とともに、
国の仕事になってしまったのは、
戦後の日本でお役人さんが北欧の福祉制度を
積極的に取り入れてきたことと
大きくかかわりがあります。
福祉制度で遅れをとっている
韓国や台湾や中国の方が日本より家族の結束が堅く、
親の面倒を見る子供が多いのを見てもわかります。
でもこれらのアジアの国々でも経済が発展して
生活水準が上がると、遅ればせながら、
日本と同じように、家族制度のタガが緩んできています。
これは社会の豊かさが
もたらしたものと考えた方がよいでしょうね。
家族があてにならなくなるとすれば、
お金を頼りにするよりほかありません。
ほかに年金とか、国の施設をあてにする人もありますが、
私のように日本の植民地に育った人間は
国はあてにならない、
国をあてにするくらいなら
自分をあてにした方がいいという
堅い信念のようなものを持っています。
ですから、税金を払うようになってからでも
厚生年金にも国民年金にも
意識的に加入しませんでした。
どうせ年金は雀の涙ほどしかくれないだろうし、
そんなものをあてにするより、
年金をもらえなくても
ちゃんと老後が暮らせるように
背水の陣を敷いておいたほうがよいと思ったのです。
これはいま考えて見ると
間違いだったかも知れませんね。
どんなにお金を持っていても、年金があると
何重にも保険がかかっているようなもので、
病気をする時も安心して病気ができるからです。
現にうちの子供たちは私よりも
メシの食えなくなる心配をする立場にいませんが、
厚生年金にはちゃんと入っています。
年をとったらみんなで国にぶらさがることに
いまの私は反対ではありません。
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