手形商売はやめた
普通、倒産したら、債権者がドッと押しかけてきて、ストックはすぐに持ち帰られてしまうし、金目のものは全部、差し押さえをくってしまう。社長は債権者会議に引っ張り出されて、まともな仕事は手にもつかないのが常態である。一度でも倒産の辛酸をなめたことのある人は、おそらく手形に追いかけられた悪夢が忘れられず、もう手形商売はコリゴリだと思うに違いない。
ところが、この砂利会社は倒産しても債権者は誰も来なかった。債権者の中で一番の大口は関西工機であり、その次は、ブルドーザーとショベル・ローダーを売ってくれた三菱重工であった。三菱の販売店には事情を説明して、銀行取引は停止されたが、お金は毎月払って行くつもりだ、それでいいか、ときいたら、簡単に承知してくれた。中古になったブルドーザーを引き揚げても、二束三文にもならなかったからである。
あとはガソリンスタンドの支払いとか、米屋の支払いのような一〇万円、五万円程度のものだから、工場が動きさえすれば払って行ける性質の金である。だから、会社が潰れたといっても銀行で小切手が切れなくなっただけのことで、次の日も工場は動いているし、砂利を運ぶトラックも走っている。それというのも、大口債権者が大株主であり、大口債権者のほうへ別の債権者が取り立てに来ていて、とてもこちらの取り立てに来ている余裕がなかったからである。
もちろんしばらくしたら、関西工機に乗り込んだ再建屋がやってきて、不渡りになった手形の代金の催促をした。しかし会社が潰れたことには、こちらにも言い分があった。
砂利の商売は相変わらずパッとしなかったが、鬼怒川にぶち込んだお金を取り戻すために、私は宇都宮市内で道路より低いところにある田圃を買い、ブルドーザーやショベル・ローダーの空いているときに、川っぷちから砂利を運んで、埋立てをするプランを立てた。すると不思議なことに、私が土地を買い入れた頃から砂利ブームが栃木県を訪れ、今まで閑古鳥が鳴いていた砂利選別機の前にトラックの行列ができるようになった。手の空いたときに使うつもりだったブルドーザーはフル回転するようになり、空地の埋立ては、山を切りくずして住宅を建設している工事屋さんに金を払ってやってもらうよりなくなった。
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