安売り屋と量販店の成功
もう一つ、スーパーの全国席捲を容易にしたのは、工業の急速な発展による流通構造の変化であろう。日本は今でも、メーカーから出る値段と小売値段のひらきが大きすぎるといわれている国であるが、産業界にこれという変化のないときは、農業や工業や商売で働く人々の比率がほぼ一定していて、それらの人々を養うために配分されるお金もほぼ一定していた。
たとえば、物の値段は小売りが一万円とすると、大体、メーカーの原価は三分の一であり、つくりあげて諸経費をかけて、メーカーから販売会社に渡る価格が五〇〇〇円か五五〇〇円になる。販売会社から卸屋におろされる値段が六〇〇〇円としたら、卸屋から小売屋へおろされる値段は六五〇〇円から七〇〇〇円くらいになる。
メーカーに割合にマージンがあるのは、物をつくるまでにかなりの経費がかかるからであり、また売れない場合の保険費用もそのなかに含まれているからである。問屋のマージンが比較的低いのは、問屋は売れる商品を必要なだけ仕入れればよいし、また小売店を何百軒も持っておれば、一品当たりのマージンが少なくとも量で充分カバーできるからである。反対に小売店のマージンが比較的に厚いのは、小売店は一軒当たりの売上げに限界があり、一品当たりのマージンが多くても、結局はたいした収入にはならないからである。
こういう原則が働いているので、物にもよるが、メーカー、問屋、小売商のマージン率は大体きまっている。大量に消費される食品などのマージンは比較的低く、金ガサはあってもめったに売れないぜいたく品のマージンは大きいのが普通である。
ところが、技術革新によって量産が可能になり、他方で年々、所得水準があがってくると、既存のマージン比率を破壊しようとする動きが出てくる。三三〇〇円でつくって五五〇〇円で出荷しているメーカーにしてみれば、三三〇〇円を一割ダウンしても三〇〇円だが、この三〇〇円のコストダウンをするのに、それこそ血のにじむような思いをする。
一方、流通過程には四五〇〇円ものマージンがある。もし卸屋をなくしてしまえば一〇〇〇円か一五〇〇円の差ができるし、小売屋をやめて卸屋に小売屋をやってもらえば、一万円のものを六五〇〇円でなくとも、七五〇〇円か八〇〇〇円で売ることができる。一万円では振り向かない消費者でも、同じ商品が二割か二割五分安で手に入るなら、買いたいと思う人はうんとふえるのではなかろうか。メーカーとしても、流通マージンの節約は最大の関心事なのである。
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