労働人口一〇〇〇万人の大移動
たまたまレコード会社を例にとってしまったが、これはホンの一例にすぎない。製造業に従事している会社の生産工程でロボットが大規模に採用され、日本の国だけで一〇〇〇万人以上の人が不要になるということになると、及ぼす影響は量り知れぬものがある。
さきにもふれたように、生産工程で働く人が不必要になり、(一)何をつくるかという商品企画と、(二)つくった物をどうやって売るかという販売の面の増強がますます大切になるとすれば、それにしたがって抜本的に人間の配置転換がおこなわれる。
一口に商品企画といっても、商品企画の中には次のようなことが考えられる。
(一)今後どういう商品が売れるか。
(二)新しいアイデアはないか。
(三)どうすれば品質の改良ができるか。
(四)コストダウンはどうやってやるか。
こういう仕事は、緻密な頭脳と判断力を必要とするから、まさか工場で働いていた者を明日からそちらへ配置転換というわけには行かないだろう。したがって工場で働いていた大部分の人々は、同じ会社の中で他の部門へ移動するか、もしくは関連会社へ移動、ないしは再就職をすることになるが、いずれにしてもそれは、生産分野から流通及びサービスの分野への大移動ということになるであろう。
すでに第一次石油ショツクの直後に、日本のメーカー業は減量経営のためにかなりの人員削減に踏み切っている。そのために、メーカー部門から流通及びサービス部門に移動した人間は、この八年間に約二五〇万人に及ぶだろうと推定されている。これがさらに一〇〇〇万人は大移動するとなれば、日本の国の産業構造に革命的な大移動が起こらないですむわけがない。
たとえば第一次石油ショックのあと、すでにそのキザシが見えていたが、第二次石油ショックの前後になると、レストランのフランチャイズ・システムが全国を風靡しはじめた。一昔前なら三菱重工やトヨタ自動車に就職したであろう若者が、「すかいらーく」や「ロイヤル」や「西武レストラン」に就職するようになり、大学出の皿運びが珍しくなくなってきたのである。
ただ何事もブームになると、自分のぺースでなく、世間のぺースに自分が乗せられてしまう傾向がある。郊外につくったレストランが繁盛するようになったのは、郊外にドンドン住宅ができてきたのにその付近にレストランがなかったことと、マイカー時代になれば田圃のまん中にあるレストランでもさして不便を感じないですむという商売の真空地帯にうまくぶつかったからである。ところが、二軒三軒うまくあたると、あとは雪崩現象が起こってくるから、私はこのブームは三年しか続かないだろう、あと三年たったら、来るお客の数よりレストランの数のほうが多くなるだろう、と冗談半分にいったが、残念ながら私の予想は的中してしまった。
目下、サービス業は、経済界全体の不振のあおりをくって沈滞しており、周囲を見回しても、皆、浮かぬ顔ばかりである。そういうところへ、さらに一〇〇〇万人の新規流入が起こるぞ、ときかされたら、ふつうの常識しか持ちあわせていない人間は、あいた口がふさがらなくなってしまうであろう。しかし、経済全体の動きを見ていると、メーカー部門から流通、サービス部門への人口大移動が起こることはまぎれもない事実であり、これにともなって流通業、サービス業に大革命が起こることはまず間違いはないのである。
このことは、すでに満杯になっている分野にさらに新しい割込みが起こって、空前の過当競争が展開されるということではない。新しい割込みは、それが可能なためには常に新しい商法や新しい商品をひっさげてくる必要があるので、既成秩序に破壊的な影響をあたえて、整理を強いることになるのである。
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