「省エネ」と「無人化」の方向へ
そうした中にあって、日本のインフレ率が諸外国に比べて低いのは、ここ七、八年、日本の工業の生産性が絶えず増大していることと重大なかかわりがある。石油ショックによって沈没しそうになった日本がコストダウンのために打った手が、日本の工業を水面より上に浮かびあがらせることになり、自動車やビデオをはじめ、数多くの日本製品に国際競争力をあたえることになったのである。したがって、少なくとも日本だけは溺れ死にしないですむことがわかったが、これを積極的に推進して世界中に輸出攻勢をかけると、他の国々で失業が起きるのだから、摩擦をおこしこそすれ、このままでは次の世界経済の起死回生策ということにはならない。
ただ、インフレに対抗するもっとも有効な手段であることはすでに証明ずみであるから、アメリカをはじめ全世界の工業経営者が日本のあとを追って、「省エネ」と「無人化」方式を採用することは目に見えている。したがって、この方面の産業は、これからかなり長期にわたって発展することは、まず間違いないだろう。私が「新しい波」といったのはそういう意味からである。
しかし、大メーカーだけでなく、中小の下請企業まで徹底的に自動化に力を入れるようになったら、どういうことが起こるであろうか。
ロボットの採用は、まず人の嫌がる作業工程だとか、人手をとくに食う作業工程だとか、正確を期さなければならない作業工程で優先的に採用される。最後まで人手に頼らなければならない工程には、もちろん、人手による作業は残るが、少量多品種工程、たとえば、自動車生産工程で、オプションによる色違いだとか、それぞれ違った部品の取付作業ていどのことは、記憶装置が簡単にこなしてくれるようになった。とすれば、一〇〇人かかっていた工程が一人ですんでしまうこともあり、かなり複雑な作業でも十人が一人ですんでしまうことになる。したがって、生産とか製造の工程から労働力が大量に排除されることになり、今まで一万人使っていた工場は五〇〇人もいれば充分だ、とか、今まで五〇〇人だったところは一五人ですむといったことが起こってくる。
「恐らく日本のメーカー業で不必要になる労働者は、一二〇〇万人くらいではないでしょうか」
と、オートメ機器の元締めみたいな仕事をしている立石電機(現・オムロン)会長の立石一真さん(故)が試算をしていたが、もし人□一億二〇〇〇万人の日本で約一割の人が配置転換を余儀なくされたとしたら、日本の経済界に従来の常識では律することのできない大変動がもたらされるであろう。
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