各被援助国の政府がIMFに救援を求めるのも外国に流出する資金の要求に応じられなくなってデフォルト宣言をされることをおそれるからであるが、IMFに一時、その立て替えをしてもらうということは、本来なら焦げついて海外に出られなくなった資金の海外逃亡に道をひらくようなものである。
不真面目な投機資金も含めて外国に出稼ぎに来ていたお金が無事に引き揚げられるようにした上で、通貨不安におちいった国々の銀行や証券会社や基幹産業や主要都市の不動産を通貨不安以前の五分の一とか、十分の一で手に入るように仕向けることになる。
破産に瀕した国々の企業が二束三文で叩き売られるのは仕方ないとしても、IMFが対外負債の肩代りをして、その条件としてそれらの国々の重要産業を外国人に売らせるというのはどんなものであろうか。
もちろん、火事場泥棒のような形で乗り込んできた外国企業がそれを機会にしっかり根をおろして成功できる可能性が全くないとはいわない。現に不良債権の整理に追いまくられている日本にアメリカ資本が乗り込んできて、ノンバンクや保険会社や不動産などを買いまくっている。銀行や証券会社も倒産した同業者のスタッフをそっくり受けついで野心的な活動をしている。アメリカ式の経営をそのまま持ち込んできてすんなり業績を上げられるようになるものかどうかは、もっと時間をかけて観察しなければならないであろう。
新聞の報道によると、日本の銀行の保有している不良債権をアメリカの投資会社が盛んに買い漁っている。好景気にわく株高のアメリカには世界中の資金が集まってくるから、十億ドルくらいの資金を用意して逆にアメリカの会社が日本に進出することは考えられないことではない。
しかし、実際に派遣されてきたアメリカ人たちを見ていると、日本語もできなければ、日本の不動産の事情には詳しくない人たちが多い。そういう人たちが英語のわかる日本人を二、三人使って銀行とか、ノンバンクをまわって売り物の情報を手に入れる。二、三人グループになって不動産を見にまわっているが、不動産のロケーションに対する正確な認識があるとは思えないし、地価に対して日本人がなぜそういう評価をするかも理解していない。またどんなゼネコンによってどれほどの建設費をかけて建てられたものかという判断もない。地価に対する日本人の評価よりも、年間見込み収入から逆算したアメリカ式の不動産評価を基準にした買収がすすめられることになる。
それでも決して間違いときめつけることはできないが、日本の経済がおちこんで地価が底値に近い時点でタイミングよく日本に進出したというだけのことであろう。もしアメリカの景気が逆転して日本のようなバブルの崩壊が起ったら、アメリカの企業が折角手をつけた海外資産を売るめぐり合せにならないとも限らないのである。
ノンバンクや証券会社や保険会社の経営についても似たようなことがいえる。東南アジアにアメリカ流の経営を持ち込んでそれなりの足場を築くことは困難でないかもしれないが、アメリカに匹敵する文化を持った国々でアメリカ流のドライな経営が全く抵抗なしに受け容れられるとは考えにくい。たとえば、「気は心」とか、「武士は相身互い」とかいったテレパシーで取引が成り立っている日本で、たとえセールスマンが日本人であっても、日本人がアメリカの銀行からお金を借りたり、また日本の株を買うのにアメリカの証券会社を使ったりするものだろうか。
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