第73回
お金を持つより、それを活用できる立場にあるほうがたいせつ
お金というのは臆病な性格を持っています。
すこしでも不安を感じたら、お金のほうから逃げ出してしまいます。
たとえば、カントリーリスクという言葉がありますが、
カントリーリスクが高くなると、
お金があってもみんな逃げてしまいます。
フィリピンのように、政変が起こるのではないか
という不安がある国には人もこなくなりますが、
その国の人たちもお金を持ち出そうと懸命になります。
それを、いろいろと規則をつくって逃げないようにしようとする。
そうすればするほど、お金はよけい逃げようとするのです。
人間が動きまわるにはパスポートが必要ですが、
お金が国境を越えて逃げていくのには、なんら支障はありません。
テレックスひとつで、その瞬間にお金はアメリカにでも、
フランスにでも移るという時代なのですから、
お金が国境を越えるのに時間はいりません。
世界の国々を一瞬のうちに動きまわることすらできるのです。
ですから、お金のほうが居心地悪くなれば、
たちどころに逃げていなくなってしまうのです。
そうしたお金はどこへいくのか。
それは、お金が身の安全を保証してもらえるようなところへ動くのです。
お金は、不安を感じたらすぐに姿を消してしまいます。
たとえば、商売がうまくいかなくなってくると、
銀行はすみやかにお金を引きあげようとします。
取引先も、友人さえもお金を貸してくれなくなります。
だから、お金というのは自分が持っていることもたいせつですが、
それよりも、お金が集まってきて、
そのお金が自分が利用できる立場にあるほうがもっと重要なことです。
お金の所有権のことばかり問題にする人もいますが、
ほんとうは、所有権がなくても、一生お金に困らなければいいのです。
そういう意味では、お金に嫌われないようにしなくてはいけません。
人間についても同じことがいえます。
人をたいせつにすれば、人も自分をたいせつにしてくれるものです。
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