第287回
自由貿易と既得権
北欧諸国はEUの中国衣類規制に反対で、
8月11日に行なわれた北欧企業組合の会議で反対決議を出しました。
各国一致して最初から反対していましたが、
この規制を「EUの最大の問題」としています。
どういうことで反対かいうと、
EUの商業の利益を減らすだけではなくて、
世界的分業の時代の妨げになるからだそうです。
衣類業者が中国に注文して支払いも終った服を、
店に配送できないでいます。
衣類規制はしましたが衣類の輸入が数%減った程度で、
裁縫業界を救う目的を果たしていないそうです。
そして北欧会議は
「世界的な分業は、
自由マーケットになって初めてその成果が現れます。
EUは中国、インド、バングラディッシュなどと
競争できないのを認めて、外国の安い品物を利用すべきです。
代わってデザイン、マーケッティング、改善改良など
自分達の得意な分野を組み合わせて発展していくべきです」
という声明をだしました。
自由貿易で生き延びるにはこういった事の他に、
品質管理能力や国際的信用を、先進国の日本や欧州は利用できます。
その代わりに、
自国で保護されている産業を手放す時代になりました。
自由貿易の方向に向けて、
EUは甜菜(砂糖大根)を使った砂糖への補助も
なくすことも決議しました。
これでヨーロッパ全土に及ぶ精製工場の閉鎖が予想されます。
デンマークの農家も
1人当たり200万円もの補助金収入を失うそうで、
農地の縮小や作物の切り替え、転職が必要になります。
デンマークにも製糖工場はありますが、
既得権を取り上げられても「そういう時代」と、
すでに覚悟ができているかのようにみえます。
小国は大国の都合に振り回されて、
自分の意志が通らない経験をしているので、
変革には慣れっこになっているのかもしれません。
補助金を続けると、日本やEUの農業のように、
国際的な競争力も失いながら予算を食い荒らす存在になります。
国際間の貿易が増えてきた現在は、
輸入品の品質管理が大きな問題となっています。
特に食品は、農薬や抗生物質など、
身体に悪い物が大量に入っていれば健康にかかわります。
また、安い輸入品が、
自国の高品質で美味しいものを駆逐することを
憂慮している人々もいます。
これ等のことがEU内の輸出入でも問題になっています。
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