前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第237回
EUの統合

EUの統合は、
フランスとオランダの選挙で否定されて足踏みしています。
多くの東欧諸国を参加させたEUはヨーロッパの安全と、
東欧の発展、そして新しい市場の開拓への期待があったのでした。
今回、反対票が増えた原因は色々考えられます。
大きいものでは、
東欧やトルコの労働者がやって来て仕事を奪う心配です。

現在は比較的失業の少ないデンマークでも、
東欧からやってきた人が、安い賃金で働き始めました。
労働組合は
「やっと勝ち取ってきた給料の水準なのに」
と、神経質になっています。
建築現場では、すでにポーランド、リトアニアからの労働者が、
デンマークの水準の3分の1の給料で働き始めました。
そして今、それが合法かどうかで、裁判が行なわれつつあります。

デンマークでは、統合を模索する中で、
活路を見つけて東欧と係わり、
すでにかなり儲けている企業家もいます。
例えば東欧の安い生産物を輸入する会社などがあります。
去年辺りからは、酪農場をポーランドに作ることがブームになって、
昨年は200億円を越える利益をあげる会社も現れました。
規模の平均ではデンマークの農家の70倍もあり、
最新技術の工場のような現代酪農です。
需要に生産が追いつかない状態で、
生産数は近い将来にデンマークに並ぶと予想されています。
ポーランドの豚肉の卸値は、
キロ180円のデンマークより20円高くて、
労賃や土地が安く、環境基準は緩やかなのです。
又、デンマークでは、耳や足の部分はほとんど利用されませんが、
中国に良い値で輸出されて無駄がありません。

以前、ドイツが統合された時に、
私の店に卸していたドイツの写真会社が、
旧東ドイツに工場新設に行きました。
その時、地元の写真工場を見学をましたが
「現像液を通す管が、なんとツァイスのガラス管!」
ということでした。
東ドイツでは、プラスチックの代わりに、
高級レンズを作る会社の、
高価で不便なガラス管を大量に使っていたのでした。

このように、
製品は悪くてコストは高い物など、
東欧には改良の余地があって、
西欧の会社の進出は、双方に利益があります。
こうして、EUの経済の統合は進んでいますが、
企業家の数は賃金労働者より少ないので、
選挙では多数票になりません。
西欧の労働者が、自分の職を失ったり、
東欧との平均化によって給料が下ったりするのを恐れるのも、
又、もっともです。


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2005年6月13日(月)

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