第217回
中国式民主主義は怒涛のごとく
デンマークの地方選挙は外国人にも投票権があります。
そして投票権がある人は、立候補もできるそうです。
選挙方法を簡単に言うと、党に入った票に応じて議席が分配され、
党内の順位の上の方から議員になります。
その順位は、党員の選挙で決まります。
国会で政権を担当しているV党の、コペンハーゲン市の議会に、
Hさんという中国人女性が再選を目指して立候補しました。
そして全体で3位、女性では1位になり、
善戦程度ではなくて、圧倒的な上位ということで、
再選は決まったも同然だそうです。
Hさんに票が集まったのには秘策がありました。
まず、コペンハーゲンに住む中国人が、Hさんの先導で、
選挙の前に大量にV党に入党しています。
Hさんは今回、その彼ら一人一人に、
投票に参加するようにEメールで
「皆さん来なはれ」と呼びかけたそうです。
そして、投票参加者300人中100人が中国人になりました。
Eメールの出し甲斐がありますね。
新聞記者がインタビューしてみると、
デンマーク語が話せない人達がたくさんいました。
一体何をしに集まったか、はっきり分らない人も多いのでした。
皆がHさんのいるテーブルに集まり、投票の仕方を尋ねていました。
そちらの対応に忙しいせいでしょう、記者が質問すればするほど、
Hさんの機嫌は悪くなるのでした。
党内順位6位にはパキスタン人が入りましたが、
彼もパキスタン人を集めてきたそうで、
上位に入って当選は有力らしいです。
ジャーナリストが他の党員達に聞いてみると
「これは乗っ取りではないかいな?」という人もいました。
「これは民主主義のエッセンスです」と言う人もいました。
幹部にコメントを求めると
「民主主義のルール通りです。
選挙というものは、
皆がどれだけ自分の支持者を投票場に集めることができるか、
ということなのです。
Hさんもそうしただけです」との答えでした。
Hさんは中国人党員を無事に投票場に送ると、
やっと微笑んで記者を迎えました。
「私が不機嫌だったらごめんなさい。
取り込み中だったものですから」
と言って記者の質問に答えました。
ゆっくりインタビューしてみると、
彼女は元気で大変面白いのでした。
Hさんの市議会政治への抱負は
「仕事を市内に増やし、
学校システムが国際的に競争力のあるものにしたい」
というものでした。
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