第214回
中国の衣類津波など
以前、私の店のフランス人が、
南フランスのテキスタイル工場が中国からの輸入品に押されて、
閉める話をしました。
そして「フランスはどうなるのでしょう?」と言うので、
私は
「35年ほど前も日本の繊維業界の大量輸出で、
同じような危惧がありました」
と話しました。
その後も、フランスは貧しくなったわけではないから
“今度もなんとかなるだろう”と、呑気に考えたのです。
ところが、EUは今年から中国の衣料品の貿易を自由化してみたら、
輸入額がこの3ヶ月で51%から534%も上昇しました。
試算によると、現在、EUのテキスタイル部門では、
1日1000人の失業者がうまれている状態だそうです。
人口が日本の10倍もあると影響力が桁違いで、
中国製衣類は津波のようにやってきて、ヨーロッパに溢れました。
そこで
「EUは中国の衣料輸出に、ブレーキをかける用意が出来ました」
となり、やはり、いずれ“なんとか”したいようですね。
デンマークなどは、この自由貿易からの逆行には反対だそうです。
元々デンマークは決めたことには忠実な方ですが、
現在は経済が安定しているので、
反対するのも、まあ比較的易しいです。
しかし、国の失業者が10%もあったら大変です。
デンマークの工場の雇用は減っていますが、
生産量は上がっているそうです。
工場の雇用のかなりの部分は中国や東欧などに移っていますが、
代わってサービス業の雇用が増えています。
機械が富をつくって全国民の生活水準を引き上げて、
余った人は機械で補えない仕事や、
新しい種類の仕事に代わっているそうです。
ソフト産業に移った人も輸出に貢献しているそうです。
デンマークは日本には豚肉を輸出して出超で、
イギリスでもデンマーク・ベーコンは有名なのですが、
農業人口も減っています。
最近のデンマークの景気が良いのは、
単に個人消費が伸びているからだそうです。
去年の好況も
「不動産の値段が上がり、個人財産が増えた結果、消費が伸びた」
というエキスパートの分析です。
どんな収入でも累進課税のかかるデンマークで、
自分の住んでいる住宅の値上がり利益だけは無税なので、
気が大きくなるのです。
トータルでは
「国際収支はやや黒字になっているからよろしい」
ということですが、
日本と比べたら黒字幅はほんの少しで危ういです。
この分析が妥当なら、日本も貿易黒字なので
「政策で不動産の値段が自然に上るようにすれば、
消費が増えて経済はなんとかなります」
ということになるのでしょうか。
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