前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第168回
環境のために遺体は冷凍しましょう

チェコのプラハの町の中にはユダヤ人墓地があります。
ナチスはユダヤ人を絶滅させる予定で、
滅亡した民族の記録として資料を集めたのですが、
それもこの墓地にあるそうです。
お墓を見たかったのですが、入場料(?)が大変高いのでした。
そこで案内書にあった
「墓地に行くより墓地がよく見える」という
隣の無料の美術館に入り、そこから見学しました。
みみっちいのです。

美術館の小奇麗なトイレは2階にあって、
待合室の窓からの見晴らしが良く、
1番良い角度からユダヤ人の墓が見渡せるのでした。
見物用なのか、美術館中で唯一つだけ、
その部屋の窓は開いていたのでした。
折から天気は崩れ、雨のユダヤ人墓地は霞んで混沌としていました。
大小様々な墓石が、無秩序に押し合いへし合いしているのです。
狭い土地にすでに一杯だった墓に、
新参者が後から後から押し寄せて、折り重なったようでした。
なるほど、こういう墓地全体の様子は中に入るより良く分かります。
墓は、大きさも高さも不揃いな乱杭歯のように立っているのでした。
ユダヤ教徒や回教徒は、
今も遺体を焼かないので場所をとるのです。
エルサレムの丘も、向かいのオリーブ山から見ると、
段々畑のように段になったお墓で、
坂が埋め尽くされたような印象でした。

デンマークでも29%は焼かないで土葬されるそうです。
回教徒も焼かずに埋葬するのですが、
自分達専用の墓地の土地を得ようと、
デンマークでも候補地を捜しています。
死んだらお終いでは寂しい人には天国を取り入れたり、
後で生き返りたい人は遺体を土葬したりと、一神教も多角経営です。

スウェーデン政府は環境を汚染させないように、
2006年から遺体を冷凍乾燥処理するように準備しています。
まず棺に入った遺体を1週間−18℃に冷やし、
次に−196℃度の液体窒素に入れます。
それから棺を揺すると死体は粉々になるそうで、
取り出してフィルターにかけて、
水銀やチタンのねじなどの汚染物を選り分けます。
水銀の汚染は墓地では量が多くて、そうとう問題になるそうです。
あとに25から30キロの土状の物が残るので、
トウモロコシかジャガイモを加工して作った棺にいれます。
すると6ヶ月から1年で棺は土になりますから、
聖書通り「土に帰る」のが早いのです。

デンマークでも遺体を焼くことは初めの頃は抵抗があったそうです。
この冷凍乾燥処理だと「焼くよりも聖書に近いなあ」と、
ある牧師はコメントしていました。
その肥料で墓地に樹木などを植えて育てることもできるし、
人は自然のサイクルに帰って行くというわけです。


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2005年3月8日(火)

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