第161回
アフガニスタンからの客
昔、私の働いていた学童保育所の子供が、
青年になって私の前に現れました。
コロコロとした体で、スポーツ好きだった少年は、
意外にもすらりとした長身の、
大変格好よい若者になって私の前に現れました。
トルコ系のユーゴスラビア人の家族には、
誰一人そんなに背の高い人もスラリとした人もいないのでした。
彼、イルジャンは私の店で写真の実習生を2年やりました。
その2年間に、故郷は混乱の後で、
朝日新聞の社旗か、日本の昔の海軍のような旗を持つ、
マケドニアという国になりました。
イルジャンはその後、写真の仕事には就かないで、
トルコ旅行が専門の旅行会社のガイドになりました。
マケドニアではトルコ語を話していたので、
トルコ系の旅行会社に入って、
トルコのツアーガイドをしたのでした。
その会社は潰れてしまったのですが、
代金をシーズンが終ってからホテルに払うことになっていたので、
ホテルは丸損しました。
旅行会社は数が多いのですが良く潰れます。
今、イルジャンは別の旅行会社で働いています。
トルコやギリシャでは寒いので、一般には冬は観光客が来ません。
北欧の冬は暗く長いので、
グラン・カナリアやエジプト、イスラエルまで行って、
よい天気と太陽を楽しみます。
もっと遠出して、タイやスリランカなどのアジアにも
太陽を求めて行きますが、
それであの津波の被害に遭ったとは大変気の毒です。
私の店の隣の刺青屋の、
その又隣がアラブ系の人が経営する旅行会社で、
両替屋も兼ねています。
正規の、そして多分不正規の送金を業とします。
競争が激しく利益が少なくお天気任せ、
という不安定な旅行業だけでは難しいです。
その店に来る客の一人で、
私の店にも時々やって来るアフガニスタン人がいました。
目つきの鋭い、民族衣装を着て身だしなみにお金をかけた人で、
世界中を駆け回っているそうです。
時々やって来ては
「これから、すぐにまたドイツに旅行に行きます」
とか言うのです。
言葉は丁寧ですがたくさん喋り、押しが強いのです。
支払いの時には、高額紙幣の札束を出して見せることといい、
どうも怪しいです。
カルザイ大統領と知り合いだと自慢していますが、
政府の高官の資金隠しならまだ怖くないです。
でも“テロリストか、その資金配達係り?”
あたりの疑いを持たれてもしかたない雰囲気です。
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