第155回
中国人?私は匈奴だ
デンマーク第2王子と香港からやってきた女性との結婚式は、
コペンハーゲンの北の、お城に付属する教会で行われました。
その、美しい湖に囲まれた同じお城の教会で、
大学生同士のレーナ・キム達も結婚式をしました。
私は若い頃は式というものが嫌いで、
日本人の友人の結婚式に招かれたのですが
「あんまり行きたくないから」と言って、
電話で断わったことがあります。ひどいですね。
決まりきった祝辞や挨拶を聞くのが嫌だったのかもしれません。
「そうですか」と一度は言った友人は、
私が電話を置いた後で又電話をしてきました。
今度はやや毅然とした声で
「来たくなくても来て欲しいです」と、言われて、
私も“そうか”と思って参加しました。
レーナ・キムの時は年の功(?)で迷わず参加したいと答えました。
披露宴の席で、私の近くに1人の東洋人が座っていました。
見たところ中国人のようです。
「中国人ですか?」と、尋ねると、彼は「フン」と、答えました。
私が「フン?ですか?」と確認すると、
やはり「はい、フンです」と、答えます。
「自分は中国人ではない」と言う意味か、
又は「自分はどこに住んでいてもフン族だ」
と答えているようでした。
後で調べたら、匈奴がヨーロッパに侵入して、
ゲルマン民族大移動の原因をつくったのは4世紀。
随分昔の話なのですね。
後日、彼を我家に招待しましたが、彼は
「ハンガリーや“・・・スタン”の付いた国々を旅した時は、
フンの跡が残っていて面白かったです」と言っていました。
中国の国民意識ではなくて、4世紀の昔から
連続した民族としての意識を持って生きているのです。
「(日本の戦争は悪かったが)“アジアがひとつになって栄えよう”
という考えはいいです」と、
私達もよくは知らない大東亜共和圏らしい話を、
若い彼が持ち出したのにはビックリしました。
本人としては、招待されたので、
サービスのつもりでそう言ったのかもしれません。
後で私達は彼の家にも招待されて、
奥さんが中華料理をご馳走してくれるはずでした。
その時初めて知りましたが、彼には奥さんがいたのでした。
でも、何があったのが、
奥さんはそれから2週間後に家を飛び出して、
中国に帰ってしまったそうです。
それで、招待の話は自然にお流れになりました。残念。
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