第143回
時には親の無い子のように、いっぱい食べたいな
ノルウェーの援助で経営している、
親の無い子の施設をガンビアで見学しました。
その施設は北欧の建物そのものように、設備が完備していました。
自分達の方式をそのまま持ち込むのは、
その方が今までのノウハウをそのまま使えるので、
簡単なのでしょう。
北欧は国民一人当たりの海外援助の額が大きいのです。
でも、せっかくの援助なのですが、
清潔で立派な施設は周りの住居から浮き上がって、
そこだけ別世界でした。
近所の子供が遊びに来ると、帰りたくなくなって、
そのままそこに住みたいと言うそうです。
三度の食事もおやつも有るし、
両親が健在の多くの子供たちの方が、
はるかに貧しい暮らしをしています。
一般家庭の毎日の煮炊きに使う薪の束が、
大工さんの半日分の給料に相当するそうです。
青空マーケットでは肉に真っ黒くハエがたかり、
売り子はピーナツバターを素手でこね回しながら
客を呼んでいます。
湿度も気温も高いので、料理用のヤシ油の大きな壷や、
燻製の魚は猛烈な臭いを放っています。
施設の子供達が、こんな生活をしている社会に出て行くと、
腸内のバクテリアを始め、
色々と適応が難しいのではないでしょうか?
「なにもここまですることは無い。と言うより、
一般の家庭とこんなに差が有っては後で困るのではないか?」
と私達は大いに疑問に感じました。
一方では働く人の事を考えると、
これぐらい衛生的でないと、
たちまち病気に罹るのかとも思われます。
北欧に住んでいる時の習慣をそのままに持ち込んで、
日課も同じようにすれば、働く人は適応も簡単です。
私がデンマークの施設で働いていてしばしば感じたのですが、
働いている人の環境がまず優先なのです。
私の働いてきた施設のミーティングでは、
患者や子供の話より
働く環境の整備の話の方が圧倒的に多かったです。
レストランや普通の会社でもその傾向が有ります。
これだけ清潔ならあまり覚悟しなくても、
ちょっと変わった国の海外勤務ぐらいの感じで働けます。
心優しい動機から働きに来る人も、
数年間海外で暮らしてみたい軽い気持ちの人もやって来て、
働く人には困らないのでしょう。
親のない子供達にとっては、後で困る事があっても、
楽しい幼年時代があるのはそれだけでも良い事ではあります。
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