第76回
マンション売ります
マンションを借りてくれたのは
身だしなみのキチンとした若い女性でした。
初めの1ヶ月は色々注文があって煩く感じましたが、
そういう人なら
部屋もていねいに使ってもらえるだろうと思いました。
丁寧に使ってくれるという予想は当たっていたし、
数ヶ月を過ぎるとうるさい注文もまったくなくなりました。
ところが2年目で結婚するので出て行くと通告をしてきました。
そこで最後の日に一緒に内部を見て、
何事も無ければ、前払いの3ヶ月分の家賃を返します。
そしてそれは不動産屋の
「レオナルド・ダ・ビンチ」が保管しているはずでした。
ところが何度彼に電話をしても誰も出てこないのです。
心配になって事務所のある住所に言ってみましたが、
名札はすでに無かったのでした。
心配した通り、やっぱりブロンソンは雲隠れしていました。
マンションの値段はその間に値上がりしていたし、
又借り手や管理会社を見つけるのも面倒でした。
そこで今までとは別の不動産屋に行って、
手数料、証書料、損害を計算に入れても
少しはプラスになる値段を提示ました。
平方メートルあたりでは高めの値段でしたが、
マンションの時価をたくさん調べた妻は
「このマンションは絶対にあと3、400万円高くても売れる」
と言いました。
それで私は交渉しましたが、
途中で面倒になって不動産屋の言い値で頼みました。
すると妻の言葉を裏付けるように、
新聞にも載らないうちに買い手が現れて売れてしまいました。
買い手と話してみると
「一目で気に入ったので、地下も屋根裏が有るのも知らないで
すぐサインした」そうです。
後でテレビの番組で知ったのですが、
不動産屋の付ける値段は
店によって30パーセント以上の開きが有るそうです。
「3つの店から値段をつけてもらいなさい」とのことでした。
色々失敗しましたが失敗の教訓を生かして
「ロケーションと建物と住民の質が良ければ大丈夫」というのが
結論です。
もうひとつありました。
そういう「良いものを見つけたらすぐに売らない」ことです。
物価や賃金の上昇の緩やかなヨーロッパでも、
少し長い目で見れば不動産投資は正しい財テクの方法でした。
そのマンションは買ってから8年たった今、
3倍以上に値上がりして売られています。
マンションの賃貸料も上がっています。
私は雲隠れをした不動産屋が
どこにいるのか調べてもらおうと警察に行きましたが
「それは弁護士の仕事だ!」と、
おまわりさんに叱られてしまいました。
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