第72回
世界一の携帯電話会社の日本式経営
ノキアは妻が最近まで働いていた会社で、
コペンハーゲンに携帯電話の開発部があります。
デンマーク人は開発に向いていると見込まれたようです。
ノキアは紙とか自転車のタイヤを作る会社でしたが、
多角経営をしているうちに
携帯電話で世界一の売り上げになりました。
フィンランドが本社のノキアは、
日本式経営を掲げて会社の目標にしてきました。
話に聞くときめ細かいボーナス制度とか
「ああ、これが日本式経営のフィンランド方式だな」
と思われるものが幾つかありました。
ノキアは年金会社と契約していました。
これは会社と社員の当初からの契約で、
金額には幅がありますが加盟する事自体は義務でした。
従業員が払い込んだ同額を会社が追加して払い込む契約です。
これは退職金制度の改良版で
会社が途中で潰れても、払い込んだ額に利子が付いて
自分のものになります。
払い込む金額と、その期間の長さと、引き出す時期によって
大きく変化します。
妻は年金会社の説明が良く分からないというので、
係りの人が退社後に家まで来て
私に説明してくれることになりました。
表を使った保険の説明が終ってから、
妻の希望する払い込みと受取額を設定しました。
月給の20%を給料から天引きして年金会社に払うと、
その同額を会社が払い込むことになりました。
これには税金が掛からないので、
全額が年金会社の投資資金(と、年金会社の取り分)になります。
労使合計で毎月月給の40%にあたる額が貯金される形になります。
比較的高率の利子を約束していて、
定年まで働いて引き降ろし時期次第で
四千万円から八千万ぐらいが手に入るということでした。
“本当かなあ‐それだけの利子を付けるのは大変です”
年金勧誘員は私にも別口の加入を勧めたので、私は質問しました。
「その集めたお金はどうやって増やすのですか?」
すると若いセールスマンは口ごもりました。
「・・・国債とか為替のレートで利益を出すとか
・・・不動産を買うのです」
「それそれ!私は年金を積み立てるより不動産を買いたいのです」
この考えはその時たまたま思いついたのではなくて、
ずっと以前から考えていた事でした。
でも私の店の状態ではそんなお金はどこにも無かったので、
その考えはセールスマンの撃退に役立っただけでした。
私達は年をとって日本とデンマークを往復したくなった時に、
お金が人より余分に必要になりそうでした。
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