前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第25回
叱られて

泥棒も嫌ですが、
写真店に付随している嫌なことはお客に叱られることです。
写真が期日に出来ていない
(ドイツの現像所に送ると遅れることがよくある)。
傷が付いている(たまにそういうことがある)。
撮ったときは青空だったのに空が青くない(紫外線のせいですが)。
写真がひとつも写っていない(本人のせいです)。
写真の粒子が粗い(露出不足です)。

そしてこちらの説明を単なる言い訳としか思わないで粘ったり、
怒ったりする人がいます。
これが嫌でよく若い女の子の店員などは辞めていきます。
私でも辞めたくなります。
でもこの程度が嫌なことなら何の商売もできませんよね。
私の店ではプリント用紙のロールや薬品の入った容器など
重たい物が多いので男性向きなのです。
でも、男の人だとどうもフィルムの扱いが荒かったり、
真面目でなかったりで困ります。
そういう点では女性の方が良いようです。

元々写真関係は女性には人気の職場のようで、
よく履歴書をそえた就職希望の手紙を貰います。
大抵は本当は写真家になるのが希望です。
それでも機械の保守や修理などは
力がないときつい仕事になるので、男の人の方が向いています。
機械の故障や不調の原因が見つからない時も困ります。
デンマークの技術者では解らなくて、
ドイツ支社から来てもらってもまだダメ。
日本の本社に何度も問い合わせてやっと直ったこともありました。
プリントの時にフィルムが引っかかるというトラブルでした。
初めの頃で
お客があまりいなかったので何とか間に合っていました。
これを直すのに一年かかったのです。
でも一般的にお客さんは優しくて、
あまり神経も遣わなくてすむので接客は楽なのです。
「こんにちわ」とか「どうもありがとう」「よい週末を」とか
先に言われてしまいます。
冗談も好きなので掛け合いで冗談を言い合ったりして喜んでいます。

一度、ドイツに出した、写真から写真へコピーする注文が
オリジナルごと紛失したことがありました。
恐縮してあやまる私に中年の女性はなまったデンマーク語で
優しく言いました。
「ああ、写真なんてなくなってもたいしたことないです。
世の中にはもっと大変なことがいっぱい有りますです。
そんなに気にしなくてもいいです。」
イスラエルから来た人でした。
「私も、どうにも仕様の無いことで人に文句を言うのは止めよう」
と、決心しました。


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2004年8月20日(金)

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