前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第24回
雪だるまとドジな店番

冬の寒い日でした。
店は暇で正午には間がある気の緩む午前中。
そこへ雪だるまのような体型をした
大きなおじいさんがやってきました。肩には雪が積もっています。
胡散臭そうに灰色の目であちこちを睨みながら
店の中を早い速度でうろつき始めました。
その速さは雪だるまの動きではありません。
丸くパンパンに張った体をくたびれた厚手のオーバーで包み、
前を両手で押さえています。

「なにを捜していますか?」
と尋ねると怒った顔で
「何だか、かんだか」と答えますが、
まるで何を言ってるのか解らんのです。
でもロシア語のような音が混じりました。
私が近づこうとすると「xxx!!」と言って
拒否するようなポーズをとったあとすぐに出て行きました。
その間ものの1分程でした。
私は変なじいさんだなと苦笑いして席に戻りましが、
少し後になって
棚のカメラがひとつ消えているのにやっと気が付きました。
あの雪だるま爺さんの太い腹なら
盗んだ品物はいくらでも入りますね。

「盗む手は見せぬ」すばやさで滅多に見られぬ見事な芸でした。
見事だけれど、大変嫌な気がしました。
この頃は出稼ぎの泥棒が増えてきました。
まとまった数の車がコペンハーゲンの路上から消えて
東欧を走ります。
貧しいアルバニアの首都の近くに
通称「ベンツの町」と言うのがあって
その辺りの道を走る車はベンツが一番多いそうです。
中古車販売の町です。
真新しい車で70万円から130万円という
値段からして盗品マーケットだと想像できます。
中には外国のナンバーを付けたままで売られている物もあります。
なぜベンツかというと
アルバニアの悪路にはベンツが一番持ちが良いのだそうです。

犯罪も国境を越えて国際化の時代です。
銀行強盗なども警備の甘いデンマークは天国みたいで、
テロリストや生活手段としての強盗の出稼ぎが
たくさん来ているようです。
泥棒されるのはお店の宿命ですが、
幸い強盗にはまだ遭っていません。
私がデンマークに来た時に読んだ観光案内には
「荷物を置き忘れても誰も盗まない国」と書いてありました。
それが今では荷物は爆弾と間違われたり、
黙って持っていかれる町に変わりました。
爆弾は国際化、泥棒や強盗は国際化と麻薬常習者が原因です。


←前回記事へ

2004年8月19日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ