第1232回
ギリシャ財政問題
ギリシャの財政に対しての事の発端は
2009年10月にギリシャで政権交代が起きた時、
新政権が2009年の財政赤字について、
対GDP(国内総生産)比で12.7%に達すると発表しました。
これはギリシャ自身が従来、
予測値として公表していた3.7%を大幅に上回るだけでなく、
ユーロ圏が加盟国の財政規律基準として定めている数字である
「対GDP比の単年度財政赤字が3%以内」の4倍以上にも上ります。
*EUの加盟国は、ユーロの信頼性を保つために
財政赤字や国の借金を一定の規模に抑える義務がある。
財政の破綻懸念に財政赤字の粉飾疑惑も加わったことで、
市場ではギリシャに対する不信感が急拡大し、
ギリシャ国債への売りが殺到しました。
ギリシャ国債10年物と、
ユーロ圏で信用力の高いドイツ国債10年物との利回り格差は、
昨年10月までは1%強のレベルでしたが、
2010年1月末には一時4%まで拡大していました。
(ギリシャ国債10年物の3月の落札利回りは約6.3%まで拡大)
また、信用不安は、同じく財政赤字のGDP比率が大きい
ポルトガルやスペイン、イタリアなどにも波及し、
ギリシャと同様に国債の利回りが上昇し、
株価も今年に入って下落してきました。
ギリシャでは今年の4〜5月に国債の大量償還を控えています。
そこで仮にデフォルト(債務不履行)が発生したり、
ギリシャがユーロ圏から離脱するような事態に陥れば、
ユーロの信用はいっそう大きく揺らぐこととなります。
ギリシャ問題に関して、
財政リスクに加えて国内のデモによる政権リスクという
新たな悪材料が意識され始め、ギリシャ問題への対応が遅れたり、
誤ったりした場合のソブリンリスク(国家の信用リスク)再燃で
株式市場は下げていました。
ニューヨーク外国為替市場では
ギリシャ問題の拡大懸念からユーロが急落しており、
5月6日、トリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁が
理事会後の記者会見で、
ECBは今回の理事会で
国債の買い入れについて討議しなかったと発言しました。
ギリシャの債務危機への新たな対応策を示さなかったことから、
ドルと円に対する逃避買いが膨らんでいました。
(円高ドル安、円高ユーロ安)
さらに米株式市場で株価が急落したことを受け、
ユーロは下げ足を速め、
ユーロ急落で市場は完全に売り一色となり、
欧州のソブリン債懸念が発端となり、
完全なパニック状態になっていました。
これを受け、先週の6日、7日にニューヨーク株式市場が下げ、
日経平均株価、香港株式市場が下げていっていました。
<次回に続く>
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