第288回
遠東生物製薬科技への疑惑
・遠東生物製薬(コード:0399)
・企業概要
4年前に香港株式市場に上場。
福建省に本社を置く台湾系バイオ企業。
主に風邪薬、ビタミンなどの医薬品開発・生産を手がけている。
・損益計算書から
単位:売上高、純利益(mHK$)、EPS、配当(HK$)
年 |
2003/6 |
2002/6 |
2001/6 |
売上高 |
992,961 |
715,717 |
409,633 |
営業利益 |
238,145 |
175,608 |
108,965 |
税引前利益 |
235,509 |
174,957 |
108,729 |
当期純利益 |
182,827 |
138,562 |
94,408 |
留保利益 |
134,325 |
111,837 |
80,244 |
一株当期純利益 |
34.4 |
33.5 |
30 |
一株配当額 |
0.080 |
0.045 |
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損益計算書から見た分には株価が下がる要素は見当たりません。
ですが火のないところから煙は立ちませんから
何か要素(原因)はあることは確かです。
噂では同社の大株主でもある蔡会長が持ち株を抵当に入れていた、
または8000万米ドルの銀行貸付契約の不履行がきっかけだ、
等がでています。
また今回の投売りのきっかけを作ったのは
ファンド会社のバリュー・パートナーズや
KGI証券が売り浴びせたためともいわれていますが、
いまの時点でははっきりわかっていません。
同社には数々の疑惑が浮上しています。
・遠東生物製薬は1ヶ月前に、13の銀行から
総額6億2000万香港ドル以上にのぼる
シンジケート・ローンを獲得したばかりであり、
昨年度の6億香港ドル余りの資金と合わせ、
たとえ債務分を引いても
まだ8億香港ドルの現金がある計算になります。
ですが現在、同社の口座残高は1億香港ドル余であるとしてしか
発表していません。
・目論見書にある新工場用地は同社主席となった
蔡崇真氏兄弟の学歴、および帳簿の審査責任を負う
非執行董事の住所等、はすべてが嘘でした。
・2003年年報によれば、270種類の薬品を製造し、
売上額は9億9000万元にのぼり、
そのうち最もよく売れている徳勝金剛感冒片等の
抗ウィルス感冒薬は、売上額の3割、
約2億8000万元を占めており、営業利益は1億元となっています。
ですが、同社で製造している40種類余りの薬品リストを手に
福州市最大の医薬品販売店3店で聞いてみますと、
金剛感冒片、ビタミン剤、復方降圧カプセル等の
3、4種類の薬品を除き、
他の薬品は全く販売されていませんでした。
一番売れるのは“金剛感冒片”ですが、
それでも1ヶ月に20箱(1箱12粒入り)くらいしか
売れてませんでした。
年報とは大違いの販売実績となっています。
・遠東生物製薬の生産基地、福州徳勝製薬廠は、
蔡従義氏は300人余りの従業員がいると言っていましたが、
参観した工場内には中薬(漢方薬)生産部、包装部、
倉庫等にわずか20数人の従業員がいるだけでした。
・また、目論見書では、同社は上場前に1,100万元で
永泰県城峰鎮温泉村湯尾20号の土地の、
50年の土地使用権を購入し、上場により資金を調達した暁には
新工場を建設すると述べています。
しかし同地に行ってみると、今に至るまで
同地には3階建てのレンガ造りの家が1軒建っているだけで
この家に住んでいる住人は
土地が収用されて製薬工場ができるという話は
聞いたこともないといっています。
<次回に続く>
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