第44回
体温を上げて免疫力アップ
「温泉は病気には効かないが、病人には効く」と言われます。
これは、どういうことでしょうか?
温泉には様々な効能があります。
その泉質により効果のある症状のことを適応症といいます。
温泉地に掲示されている
「温泉分析書」の適応症の項目を見ると、
神経痛や関節痛、筋肉痛、五十肩、運動麻痺などの疾患や症状、
または消化器病や皮膚病、婦人病、動脈硬化、高血圧といった
慢性病のたぐいが書かれています。
決して、ガンや肺炎といった特定の病名は書かれていません。
なぜなら温泉は病気を治療するものではないからです。
いうなれば、温泉は漢方でいうところの
“未病(病気になる手前)”に効果があると私は考えます。
日本人の平均体温は36.5度ですが、
最近は35度台の低体温の若者が増えているそうです。
この低体温化は、入浴をシャワーだけで
済ませてしまう人が多いことと無関係ではありません。
シャワーは体の汚れを洗い流すだけで、
入浴のように体を温めることができないからです。
体温を1度上がると体内の免疫力は5〜6倍アップし、
逆に1度下がると約30パーセントも下がるといわれています。
風邪を引くと発熱するのも、白血球がウイルスと戦うために
好条件とされる37・2度以上に体内温度を上げているためです。
またガン細胞が最も活発になるのは、
体温が35度の時だともいわれます。
だとすれば、低体温がいかに病気の温床となっているかが分かります。
昔の日本人が、季節や労働の節目節目に
湯治へと出かけて行ったのも、
決して病気を治すことだけが目的ではなかったということです。
温泉に入浴することにより
体温を上げて、免疫力を高め、
病気の予防を心がけていたと解釈するほうが正しいようです。
先人たちは、永い間培われてきた健康への知恵として、
湯治を実践していたことになります。
私たち現代人も、もっと“未病”のための湯治を
生活に取り入れたほうが良さそうですね。
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