温泉で元気・小暮淳

温泉ライターが取材で拾った
ほっこり心が温まる湯浴み話

第38
名前を変えた温泉

JR吾妻線に、小野上温泉駅があります。
しかし以前ここには、別の名前の温泉地がありました。

小野上温泉は、かつては塩川温泉といい、
傷に効く名湯
として知られていました。
その歴史は古く、温泉を祀った湯前薬師の石堂には
寛文4(1664)年12月に創建されたことが刻まれています。

昭和初期までは湯治客でにぎわっていましたが、
戦後になってからは湯量の減少や交通の不便さから、
次第にすたれていきました。
昭和53(1978)年、それまでは細々と
老人ホームで利用していましたが、
湯量も少なく温度も低かったため、
旧小野上村が新たな源泉を掘削したところ、
毎分270リットル、40度の温泉が湧出。
浴槽と建物を造り、入浴施設をオープンさせました。
宿泊施設のない、大広間で休憩するヘルスセンター方式の温泉は、
当時はまだ珍しく、村内外から大勢の人々がやって来てきました。

村は利用客からの要望もあり、
より大きな浴槽と建物を建てると同時に、
さらに多くの湯量を得るために新源泉の掘削を行ったところ、
毎分500リットル、50度の温泉が湧出。
昭和56年3月、
新たに「小野上村温泉センター」がオープンしました。
大露天風呂、カラオケステージ付きの休憩室、
さらに食堂や個室までもが設備されました。
現在では当たり前の設備ですが、当時は国内でも
日帰り温泉施設の草分け的存在だったため、
利用客は年間20万人を超える大盛況となりました。

いつしか人々は「塩川温泉 小野上村温泉センター」を略して
「小野上温泉」と呼ぶようになっていました。
その人気のほどは、平成5年(1993)年にJR吾妻線、
小野上温泉駅が開設されたことでも分かります。

小野上温泉駅の開設後も、しばらくは
温泉地名を塩川温泉と名乗っていましたが、
平成18年の渋川市との合併を機に、
源泉名と温泉地名を正式に「小野上温泉」と改名。
湯量豊富な新源泉の掘削と温泉センターの集客力により、
この地に新たな温泉地が誕生しました。

平成21年1月、小野上温泉センターは「さちのゆ」として、
さらに規模を大きくしてリニューアルオープン。
現在、公営と民間合わせて4軒の宿泊施設があります。


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2012年4月7日(土)

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