翌朝の新聞を見ると、私の挨拶がデカデカと報道されていた。しかし、私の証券金融公司は遂に陽の目を見なかった。何年かたってのちに政府の関係者によってお役人の天下り先としてやっと実現したが、どうして私が提案したときに実現できなかったかというと、私がいくら説明をしても、大蔵大臣でさえ証券金融の何たるかを理解しなかったからである。
私が日本の投資信託の証券のサンプルを持って行って、投資信託の説明をしても、投資信託と信託銀行の信託業務とどこが違うのかときかれるのがオチだった。証券取引所はあっても、証券に対する高官たちの認識もその程度の水準にすぎなかったのである。
その後、いろいろないきさつがあったが、結局、証券金融公司は設立できず、またブローカーを業務とする証券会社も許可されず、一年あまりたってからやっと永漢証券投資公司という資本金一億元の金融会社ができあがった。
台湾の証券法はアメリカを見習っているので、日本のように証券会社一社でブローカー、ディーラー、アンダーライターを兼任することができず、従来はブローカー業務の証券会社だけだったのに対して、新しくディーラーとアンダーライターを兼任できる証券投資会社法をつくり、それに基づいて私に許可をしたのである。
ただし、私にだけ許可したわけではなく、同じ条件を充たした者には皆、許可をしたので、同じ法律に基づく証券投資公司が同時に五社できあがってしまった。 |
