台湾の繊維株に投資して大ヤケド
発展途上国で事業をする危険
私は養鰻事業をやろうとして一億円持ち逃げされた。また牧場を経営しようとして四千万円も牛に食われてしまった。養鰻のときは詐欺の舞台になった鰻の池を取り返したのでもう一度、シラスを購入してはじめからやりなおしてみたが、池の設備も旧式だし、桃園という地域は冬の気温が低すぎて鰻の育ちが悪いことがわかったので、包装設備だけを活用することになり、鰻は養鰻業者から仕入れてもっぱら台湾から日本へ鰻を運ぶ貿易に専念することになった。
一頃は取扱高が年間十五億円にも及び、業界でも三本指に数えられるほどになったが、年間を通じて決算をしてみると、日本の輸入税だけでも六、七千万円も納めているというのに収支トントンで全然儲からなかった。同業者間の競争も激しかったし、生き物なので運送中に死ぬと半額にしか売れず、日本側の業者に値を叩かれるからである。
そればかりでなく、台湾の養鰻業者たちも日本の短波放送をきいていて、築地の建値がキロ当り五十円でもあがると、直ちに池出しの値段を上げてくるので貿易業者にはお金の儲かるスキがないのである。
そのうちに生きたまま運ぶよりも、台湾で白焼にして運ぶ業者がふえてきた。急速冷凍の技術もすすんだが、鰻を裂いたり、加工したりする賃金は台湾のほうが安いからである。そうした業者が高値で買付けをするので、成鰻を生きたまま運ぶ商売がますます引き合わなくなってきた。 |