既製服の滞貨一万五千着を抱え込む
一億円手渡したが
養鰻場に案内してくれた車中で、頼文彬は、
「自分は花蓮の貧家の出身で、事業に成功しようと思って日夜、努力している。鰻は金の儲かる事業だが、生き物を扱うので、入荷のシーズンになると、夜も寝られないくらい忙しい。そういうときは現場に詰めっきりで幾晩も徹夜をします」
と養殖事業の内容についてあれこれ説明をしてくれた。
私たちを乗せた車はベンツの新車で、私は当然、本人の持ち物と思っていたが、あとで露見したところによると、台湾資生堂の総経理からの借り物であった。これもあとでわかったことだが、実は資生堂の総経理も、私と同じような手口で詐欺にかかり、私から本人がだまし取ったお金の中から、ひっかかったお金の一部を返済してもらったそうである。
そんなこととは知らないから、私は真面目に本人の説明に聞き入っていた。
本人の言うところによるとシラスが暴騰をしたために資金不足におちいり、せっかくの設備が遊んでしまった。日本でシラスを買って、ここで養殖をすれば、充分、採算に乗る。もし先生が私をひきたててくれれば、先生のためにどんな苦労もいといません。そんな話をきかされながら、養鰻場についてみると、池は五町歩ばかりあって、周囲を鉄条網でかこんでいる。調査局の定年退職者を場長にやとって四六時中歩哨を立てて見張っているので盗難の心配もないということであった。私は日本の商社が台湾でかなり大規模な養鰻事業に乗り出している話をきいていたので、本人がそんなに頼むのなら、「日本へ来なさい」といって台湾を発った。
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