製薬会社は人手に
ところが、あとが続かなかった。私の頭に生えた産毛は黒々とした髪の毛までは成長せず、産毛のまま終わってしまった。それは現在の私の頭が示しているとおりである。
おかげで派手な宣伝をした私のライバルはたちまち倒産してしまったし、私もこれ以上「救髪」を売り続けるわけにはいかなくなってしまった。今でも、私は「救髪」の成分は、細胞の新陳代謝と重大な関係を持つ物質であると信じているが、しかし、それを血管を通じて二十四時間供給しているのと、頭の上からホンの申しわけ程度に一日に一回か二回供給しているのでは効き目に格段の違いがあるのはむしろ当然であろう。
私の産毛が消えるとともに、私の毛生え薬に対する情熱も色褪せて、「救髪」の会社はM氏の親戚によって受け継がれることになった。
「救髪」の効果は目に見えるほどではなかったが、同じ成分をサリチル酸などの従来の水虫の薬方と混ぜあわせてつくった「救足」は、水虫に覿面の効果があり、一度使ってなおった人からまたシーズンになると、必ずのようにリピートがあったので、少人数で細々とやれば、小さな製薬会社を一社成り立たせるくらいの売り上げがあった。
私が見ると世間で市販されている水虫の薬には、気休めのものが多い。それにひき比べて「救足」に即効があることは、使用してみればすぐにわかることである。だから売れそうに思うが、効果のある薬がよく売れるとは限らないことをつくづく思い知らされた。それではいかにも無念なので、私は製薬会社に頼まれて講演をする度に、「おたくでこの薬を売ってくれませんか」と頼んでみた。
ある有名な製薬会社の社長さんは私の頼みに対して「いや、うちには水虫の薬があるから駄目ですよ」とその場で断った。「でも、おたくの水虫薬は効かないでしょう」と私が言いかえすと、向こうも負けてはおられず、「効かなくたっていいじゃありませんか。売れるんですから」。
これにはさすがの私も返す言葉に窮してしまったが、世間で売っている薬なんて、まあ、そんなものである。ついでに申せば、商売にはならないが、今でも私自身は「救髪」を愛用しているし、「救足」は水虫で困っている人にただであげている。
←前ページへ 次ページへ→

目次へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ