編集長と面談したあとで、今度は編集局長さんが出てきた。私が「是が非でも株をやってみたいのだ」と言うと、編集局長さんは苦笑をして、
「センセイ。うちの会社では株の買い方を教える雑誌をつくっていますが、社員は株を買うことを禁じられているのですよ」
と言った。
「それはまたどうしてですか?」
「社員が欲にかられて株を買ったりすると、欲に目がくらんで判断を誤りますからね」
「なるほど」
「でも雑誌で推奨すると値が上がることも多いんです。ですから社員から声があがりましてね、個人が買っていけないのなら、皆で金を集めて投資信託をやるくらいならいいでしょう、じゃそうしようということになって、社員有志が金を出しあい、運営委員を任命して、これで一年になりました」
「で、成績はどうでしたか?」
「一年たって計算してみたら、やっと元手スレスレなんですよ」
「へーえ」と私はびっくりして、
「でも、立派なビルをお持ちじゃありませんか?」
と、きき返した。
「このビルは株をやって建てたものじゃございません。株の雑誌を売って建てたものなんです」
これには思わず声を立てて笑い出してしまった。 |