第一章 台湾独立に賭けた夢 ひとつの成功の陰に九つの失敗あり
実より名が先行
私は自分が人生の成功者であると、ただの一ぺんも思ったことがない。だから成功者のために設けられたテレビ番組に出演したり、新聞に成功談を載せたりすることは苦手のほうである。いくらすすめられても、尻込みしてしまう。
しかし、世問は必ずしもそうは思ってくれない。約二十五年間、ジャーナリズムでお金のことを書いてきたし、多少は「先見の明」を発揮したかに見える意見を述べているし、それを裏付けるために、自分でも実地に事業をやってきた。その中には成功の部類に入る業績をあげているものもいくつかある。
そこでいつの間にか「お金儲けの神様」といったニックネームまでいただいてしまった。
つい最近、創刊された『マネー』という雑誌に連載対談をたのまれ、その第一回として、女房と娘が動員され、私の舞台裏を暴露する企画がたてられた。私はしくじりや暴露をおそれないほうだから、別にかまわないことだが、発表された雑誌の目次を見ると、「神様の私生活」となっている。しかも、私たちの家族の写真まで車中広告に刷り込まれて電車という電車の中にぶらさげられ、通勤電車に乗った人々の目に曝された。何事かと好奇心をそそられる人も多いと見え、「どの記事が一番面白いと思いましたか？」というアンケートをとると、山と積まれた返信の中で、「圧倒的に人気があったのは"神様の私生活"でした」と編集者からきかされた。 |
