第360回
「長いお別れ」
これから先、
中国からたくさんの医薬品が
日本に流れ込んでくることと思いますが、
成分がすべて漢字で表記されているため、
漢方薬と間違う危険性が潜んでいます。
数年前にも、アトピーの特効薬として
医師が中国から個人輸入して販売していた
“安全な漢方薬の軟膏”が
実は、ステロイドの軟膏だった事件がありました。
そのときの成分表示は「酪酸地塞米松」で、
日本語に訳せば「酪酸ジヒドロコーチゾン」、
れっきとしたステロイド含有の軟膏剤です。
現在、中国と日本の間で
「反日問題」という
非常に大きな摩擦が起こっておりますが、
それも煎じ詰めれば、
お互いの意思の疎通が
うまく出来ていなかった証拠でしょう。
しかし医薬品では、こうした思い違いは
命取りになる恐れが多分にありますから、
正体が不明の場合、使用は避けるべきです。
また、中医学や漢方というと
漢方薬ばかりを連想しがちになりますが、
一番大切なことは病気の本質を掴むことです。
病気の本質を捉え、
その悪化要因を少なくする工夫をすれば、
それが中医学や漢方の治療になるのです。
漢方薬を使うのは、
それからでも遅くはありません。
※中医学的な病気の本質の捉え方、
悪化要因を少なくする工夫は、
「中医学事始め」のコラムの前半の部分で
集中して書きましたので、
ぜひ、再読して見て下さい。
アザラシが親子でいられる時間は約2週間。
あっという間にやって来る親離れの時、
大切なことが、別れによって伝えられます。
母の姿を求め鳴くことをやめる時、
子供は、厳しい自然を、
生きることを覚えはじめます。
「中医学事始め」を執筆するまで、
私は文章を書くことが非常に苦手で
まったく自信もなかったのですが、
執筆する機会を敬愛する
邱永漢先生から与えて戴き、
スタッフの皆さんのご協力もあって
3年近く、どうにか頑張って
続けることが出来ました。
しかし現在、医療の世界は
めまぐるしく移り変わってきており、
この辺で、充電する時間が
どうしても必要になってまいりました。
愛読者の皆さんに会えなくなるのは
とても残念で寂しいことですが、
しばらく、私は筆を置きたいと思います。
長らく、「中医学事始め」を
ご愛読戴き、本当に有難うございました。
また、邱永漢先生、スタッフの皆様、
拙い私にご厚情をおかけ下さり、
本当に有難うございました。
惜別の情は尽きませんが、
またお会いし、
歓談できる機会が訪れることを
楽しみにしております。
城戸 克治
FAX: 020-4624-1552
E-mail: tegami@kanpo110.com
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