第341回
ハウス食品の秘められた過去
「医食同源」とか「薬食同源」といった文字を
この頃、中華料理店の店先などで
よく見かけることがあります。
医食同源は、昭和の始めに
日本人が作り出したネーミングで、
薬食同源のほうは
昔から中国でも使われてきた言葉です。
しかし、漢方薬に用いられる多くの生薬が、
桂皮はシナモン、生姜はジンジャー、
茴香はフェンネルなどというように
スパイスとしての
別名を持っていることを考えれば、
医食同源というよりも
薬食同源という言葉のほうが
やはり本来の意味が伝わるような気がします。
また、ショウガ科の植物の地下茎を乾燥させた
“ターメリック”という
カレーの色づけに用いる香辛料がありますが、
生薬名は鬱金(ウコン)といい、
カレーで有名なハウス食品の前身も
実はこうした漢方生薬専門の薬問屋でした。
いわば、何気なく香辛料として使われている
生薬の種類は思いのほか多く、
ほとんどのスパイスが
生薬として通用する可能性がある
といっても過言ではないのかも知れません。
さらに、私たちの日常生活を振り返ってみると、
一般に利用している食べ物の中に
薬効を持つ食品が潜んでいる場合も
意外とけっこう多いものです。
例えば、お寿司屋さんで
ワサビや生姜、酢を使うのは、
もちろん食欲を増進させて
たくさん食べさせるという意味もありますが、
本来の目的は
殺菌効果や防腐作用を期待してのことです。
また、魚屋さんで
刺身の横に紫蘇(しそ)の葉が添えてあるのは、
紫蘇の葉には魚の毒を消す働きがあるからです。
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